経営

相思相愛のお客様と出会うファンマーケティング

購読しております日経MJ(5月21日)の1面に掲載されていた記事が気になりましたのでシェアします。

タイトル通り、「ファンマーケティング」の今について数社の実例とともに紹介されておりました。以下に簡単に記事の内容を取り上げ、ファンマーケティングの勘所について説明したいと思います。

「ファンと会うことこそがものづくり」と言い切り、頻繁にイベントを開催。カリスマ代表とファンが熱い交流を繰り広げる愛媛県今治市のタオルメーカー「IKEUCHI ORGANIC(イケウチ・オーガニック)」,「和製カーネル」の異名をもつカリスマ社員がファンと触れ合う「日本ケンタッキー・フライドチキン」,「レタス隊」という独自の読者組織を結成し、「とにかく忙しいから楽をしたい」という読者のホンネを「平日1ヶ月分の献立カレンダー」という形にすることで完売御礼、出版部数を堅調に伸ばしているKADOKAWAの生活情報誌「レタスクラブ」,などの取り組み事例がありました。

その他、補足としてデジタル一眼レフカメラ「αシリーズ」のユーザー同士のコミュニティ「αカフェ」を運営するソニーや,個人株主を「ファン株主」と呼んで、社長との交流会や工場見学などのイベントを企画するカゴメなどの事例も。

詳しく知りたい方は紙面をご購入ください。(定期購読はコチラから)

そもそもファンマーケティングとは

大量生産・大量消費時代を象徴するマスマーケティングに対し、少数の熱狂的なファンの獲得と彼らとの継続的で発展的な信頼関係構築を目的としたものファンマーケティングと言います。

ここからは当社独自の定義になりますが、当社ではファンとは素性のわからない一般消費者とは違い、互いに素性がわかり、対等で、自らは消費者でもありながら企業になんらかの価値貢献をもたらすお得意様としており、そこには従業員も含まれます。

当社の提唱するファンマーケティングには、従業員が支持しない(ファンにならない)自社の商品やサービスは誰も買わない、誰も売らないという暗黙の了解があります。

したがって、ファンマーケティングにおいて、一般消費者にばれなきゃいいやと不正を働くことは、その裏側をよく見ている従業員(=ファン)への裏切りと同義となります。

9人のお客様

さて、ファンマーケティングについては、経営コンサルタントとしてここ10年以上顧問先には口酸っぱく指導してきた気がします。ずっと言って来ていることだけになにを今更と思うことも多々あるのですが、なにごとも新しくネーミングされたり再定義されると息を吹き返し、新しさすら感じるから不思議です。

その勘所といえば、お得意様のさらに上の上お得意様を大切にせよという商売の原則のお話でもあります。

「9人のお客様」という当社考案したマトリクスがございます。機会があれば図示して丁寧に説明したいと思いますが、ここでは簡単に3×3の9マスを思い浮かべてください。

縦軸に客,従業員,その他(取引先や株主など)を、横軸に客,上客,最上客を設定します。それぞれ、3種類のお客様3段階のお客様と定義します。

当社のファンマーケティングの定義では従業員はお客様、つまり、一緒に働いてくれるお客様です。その他は、協力してくれるお客様、応援してくれるお客様です。

3段階のお客様は、互いに素性がわからないうちは普通の客、つまり顔見知り程度ではまだ上客ではありません。互いに素性が分かるようになって(お名前でお呼びし合える仲になって)はじめて上客となり、こちらの経営について気にかけてくださり、いざというときには支援してくださるようになると最上客となります。

一般的には、購買頻度や利用回数、購買額や使用額で、たくさんお金を使う人たくさん利用する人ほどお得意様と見ることがありますが、当社の定義するファンマーケティングでは、「金出してやってるんだから特別扱いしろ」という横暴な振る舞いをする客は客として除外したい(ファンマーケティングの基本原理である顧客と対等の関係が崩れる)ので、信頼関係の度合い、親密度を重要視した指標としています。

9人のお客様マトリクスに従えば、3種類のお客様それぞれについて、客から上客、そして最上客を目指し信頼関係を構築してゆくすことが事業の中心活動となります。

3種類のお客様が皆ファンなら良い商品、良いサービス

あくまで簡易的な見極め方法ではありますが、一般客だけではなく、その商品やサービスの舞台裏まで知り尽くした従業員や取引先等が自らもいちファンとなるような商品やサービスは、良い商品,良いサービスと言うことができます。

前段で「暗黙の了解」と書いた通りです。

自分たちが惚れ込んでいて自分たちが一番のファンで、一番のユーザーである、そういう人たちが自信を持っておすすめする、そういう人たちにおすすめされる、そういう商品やサービスを我々は買いたいし,そういう人たちから購入したいと願っています。

これは絵空事でもなんでもなく、こういう気持ちの良い購買活動こそがあるべき姿であると思うのですが、これが絵空事に思えてしまうほど、我々の身の回りには妥協の購買活動が溢れています。

最上客こそすべて/3.11が教えてくれたこと

ちょうどあの頃わたしは雇われコンサルタントをしておりました。簡単な経営診断を行い、診断内容によってはより専門性の強い適切なコンサルタントを紹介する、というような経営診断の窓口業務を行っておりました。

3.11前は1日に15件前後だった経営相談が、3.11後は3〜5倍に膨れ上がり大変な多忙を極めたのを記憶しています。そのいずれも営業できないので廃業するしかない、顧客先をなくしたので廃業せざるをえない、というような後ろ向きな相談ばかりでしたが、そんな相談を猛烈に捌いていく中で、こんな苦境においても頑張っている企業がある、そしてむしろ逆境に打ち勝ち業績を急激に伸ばしているところまである。置かれた状況は同じであるはずなのに一方は廃業、一方は業務拡大、この差は一体何なのだろうかと素朴に疑問になり、200社以上のリサーチを行いました。

結論だけ言ってしまえば、苦境ほど栄える企業には、最上客がたくさんついており、最上客により支えられていることがわかりました。お客様との絆と言ってしまえば安っぽいですが、たしかにそれを確認することができました。

一方で廃業に追い込まれる企業には、最上客はいなかった、ことがわかりました。いや、廃業するまでは多少いると思っていたのでしょう。ところが、窮地に立たされてはじめて真価は問われます。もう駄目だというときについに救いの手は差し伸べられませんでした。あっても微力すぎました。

苦境に耐え生き残った会社には、苦境に際し最上客により救いの手が差し伸べられたというエピソードに枚挙に暇がありません。

「お宅がなくなると困るから」

と応援してくれるわけです。

もうダメだと早々に見切りをつけ、ここぞとばかりに辞表を提出して去っていく薄情な従業員もおりません。会社がなくなると困るから自分たちにできることはなにかないだろうかと知恵を絞り労力を惜しまない従業員で溢れております。

このリアルを目の当たりにした私は、最上客をいかに増やすかが企業存続のキーファクターであると完全に思い知りました。この経験が当社のファンマーケティングのベースとなり、以来、顧問先企業へ口酸っぱく指導してきていることの一つとなっています。

顧客開拓とは砂金採りと心得るべし

マスマーケティングがザルで川底の砂をすくい玉石混交に販売活動を行うことだとすれば、ファンマーケティングでは徹底的に篩をかけ砂金を集めるところから始めます。

むろん、砂金をとるためには、地質学的な見地から砂金が採れる可能性が高い場所を戦略的に見極めピンポイントで攻略します。

このたとえ話で何が言いたいかといえば、顧客と顔なじみの親密性の高い関係構築を行っていくということは、有象無象の砂粒の中からほんの一粒の砂金を見つけ大切に育てていくことに等しく大変な作業だということです。

そのくらいの覚悟を持って挑む、そのくらいの価値がある、それがファンマーケティングです。

悪貨は良貨を駆逐する/グレシャムの法則

砂金採りで明白なように、ファンマーケティングでは間口を広くして有象無象をがさっと集めそこから残ったものを拾い上げていく、ということはしません。このやり方で残るのは「淀み」であり「澱(おり)」であり沈殿物です。

これらはふるい分けられたものではなく、気に入らない他者をあの手この手で押しのけ振り払い生き残った悪貨です。

「悪貨は良貨を駆逐する」で有名なグレシャムの法則です。

悪貨を残さず良貨だけを選別するためには、最初に念入りに篩をかけなかればなりません。つまり、ファンマーケティングでは最初から選り好みします。

悪貨が混入しないように参入障壁を設けます。これをマーケティング的にはファネルと言います。ファネルとは理科の実験で使うロートです。ろ紙をセットすればろ過されたきれいな水がビーカーにたまります。

ファンマーケティングでは泥水が落ち着くのを待って上澄みを取ることはしません。徹底的にろ過して純水を得ます。

ビジネスではどうしても不安からまず最初に量を求め質が疎かになりがちですが、ファンマーケティングでは徹底的に質にこだわります。

量から入ると質を重視するファンに不満がたまり、ファンが離れます。「暗黙の了解」ではこれを「ファンへの裏切り」と言ったわけです。ファンを裏切らないためには、最初から質を保ち質を落とす成分や原因は混入させない対策を徹底しなければなりません。

まとめ

いささか急ピッチな文章となり乱筆散文となってしまいましたが、ともかくいち早くこの文章をお届けしたい人たちがおり執筆を急ぎました。折を見て加筆修正を加えより良い記事へして行きたいと思います。

とにもかくにも、ファンマーケティングは市場縮小時代にはますます重要になってきます。最終的に行き着くところでもありますから最初から取り組むことをおすすめしますし、なにより一握りの大手以外の中小弱小企業の生き残り戦略はファンマーケティング以外にないとも言い切れます。

当社の定義するファンマーケティングは最初から絞りに絞れと言っている時点でかなり過激なものではありますが、結局の所、相思相愛のお客様との出会いは砂金採りより厳しいものと心得ます。

不安から質より量を求めるとかならず失敗します。失敗しなくても成功へのリカバリーがとても大変になります。失敗してから新たに始めるほうが簡単だと思えるくらいに。

この記事を読むであろう大切な仲間や未来のお客様のお役に立てることを願っています。

ファンマーケティングについてさらに

これらは記事を書く上で参考にはしていませんし、おすすめするわけではありませんが、ファンマーケティングを知る上で参考になりそうなので紹介します。

後藤 健太

後藤 健太

サムライ社長/株式会社コンセプト・コア 代表取締役

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