写真はわたくし。昨年末に撮影したもの。背後から斬りかかる敵の攻撃をかわし鞘の内からの抜き打ち(居合斬り)の逆袈裟で迎撃する。
真剣による試し斬りの一般公開という、当時、業界的には異端で御法度なことを大々的に始め、今では一大ムーブメントともいえるくらいに、日本らしい体験、日本的な体験として紹介され引き合いの増えてきた試し斬り体験(試斬体験)だが、最近では、市場参入してくる模倣者、追従者が増え、競合が激化の様相を呈している。
しかし焦ることはない。結局生き残るのはほんの一握りの本物だけである。ビジネスチャンスを嗅ぎつけて後乗りしてくる偽物、紛い物は自然と淘汰される運命だ。
さて、そんな後乗り偽物、紛い物団体について。
その内実は真剣を用いた、抜刀状態(刀を鞘から抜いた状態)で上段に振りかぶってからの斬り下ろしによる畳表の試し斬りなのだが、それを居合斬りと称して客寄せをする悪質な団体がある。
武士道だとかサムライスピリットだとか、武士と侍、居合と剣術の違いも区別がつかないようななんちゃって素人団体が、日本の伝統文化や武士道を間違った形で吹聴し、寄付だ募金だと社会貢献を旗印に悪質な金儲けをしている。
居合と剣術の違い
居合とは臨戦態勢にない平常時に、敵の急襲を受けた際に臨機応変に応じる刀を用いた武術を言うが、平常時なので当然刀は帯刀してるか、近くに置いてあるのだ。その状態からいかに早く抜刀し抜きつけるか、鞘の内からの迎撃の剣技。それが居合である。
これに対して剣術とは、互いに刀を抜いた状態から立ち会う一連の技術体系を言う。
居合は刀が鞘に収まっている、剣術は刀が鞘から抜かれている。大雑把に言ってしまえばこのような違いがある。
ただし、居合においても一度抜いてしまえばそれに続く二太刀目以降は剣術だと言うことができる。
居合斬りとは
鞘の内からの迎撃の技術を居合と言うのだから、居合斬りというとき一般的には鞘から一気に抜いて斬る、抜き打ちや抜き付けを居合斬り(抜刀術)というのであって、鞘から抜いた刀を正面に構えて上段に振りかぶって斬る斬り方を居合斬りとは言わないのは明白だ。
にもかかわらず、件の社会貢献を旗印にした嘘っぱち団体は間違いを本物だと平気で吹聴する、ばかりでなく、寄付、募金を建前に高額な体験料を何も知らない国内外の体験者から集金している。
居合斬り体験というからには鞘の内からの抜き打ち、抜き付けをもって斬る体験でなければならないが、実際にはそれはできない。
なぜかというと、鞘の内から一気に抜いて斬る技は、居合の本義と言われるように難易度が非常に高く、それゆえに自分の手指や身体を切ってしまったり、刀をすっ飛ばして周囲を危険に晒してしまう恐れがあるため本来抜くことも許されない。
したがって、初心者に本当の意味での居合斬りを体験レベルでやらせるところは今のところない(あったら恐ろしい)のであり、居合斬リと言ってるのは居合斬りと称したただの斬り下ろしによる試し斬りであることを知っておいた方が良いだろう。
まとめ
何が正しくて何が間違っているか、何が本物で何が偽物かという議論は突き詰めればキリがない。そもそも素人に真剣を持たせた上に斬らせるということ自体、それが居合斬りであろうがなかろうが疑問視する声があることはしっかりと認識しておかねばならない。
ただ言えることは、1000人以上の体験者の生の声、感動の声を聞いている分には、毎度やってよかったと思える、ということだ(けしてやって正解だとは言わないが)。
件の団体については、最近目に余るのでこの辺で釘を指しておかねばならないと思った次第。これによって貶めようとかそういう目的はないのでその団体を特定し公表することはしない。
ただ、誤りに気づいてそれを訂正し、誠実に運営していただければと願うばかりだ。何しろ届けようとしている価値、繋げようとしている思いは共通のはずなのだから。
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