昨日、実に久しぶりにアイデアカード関連のセミナーが開催されました。開発者で講師の岡野さんからのアナウンスは、例のごとく直前(今回はなんと前日!)でしたが、それでも会場となった四谷三丁目のBar43には、10名以上の来店が有り、席が足りないほどでした。
アイデアカード・シンキングとは
いつものアイデア・カードワークショップやセミナーとは違い、今回は、「今までどこでも話すことがなかったアイデアカードの本質に迫る内容をお伝えしたい」そう切り出すと、初参加のゲストもいたため猛烈なスピードでアイデアカードとはなんぞや?を説明しだす岡野さん。
アイデアカードとはなんぞや?はこちらのエントリーを御覧ください。
アイデアカードは、アイデアの創出を支援するツールですが、そもそも身の回りのアイデアを要素に分解して取り出したもので、その分解・再構築という頭のなかにあるフォーマットを可視化・物質化したものです。
つまり、使い方の応用例として、他の何かから知恵を取り出し、それを他のアイデアに転用するということも可能です。
アイデアカードはいくらでも数を増やせる
アイデアカードは、目的カード25枚、着眼点カード25枚、変更カード32枚の合計20000通りの組み合わせが可能なカードですが、これは標準のセットであって、それぞれいくらでも増やしていけることができます。
演習では、身の回りの色々なものから学ぶということで、ウィスキーの瓶やバナナ、葉っぱなどの物質から、車やビジネスモデルなどいろんなテーマを題材にして、そこからアイデアカードのフォーマット「〜するように、〜を、〜する」に則り、アイデアを抜き取る、ということを練習しました。
テーマをいろいろなものに設定することによって、それぞれの存在理由や役割から、実に様々な目的が引き出されました。これはそのまま目的カードとなるわけです。
このようにして、着眼点カードや変更カードも順次増やしていき、抽出された新しい要素を他の何かに転用してみる、ということをした時に、実に面白いことが起きました。
これはセミナーやワークショップで実際に体験してみて下さい。
アイデアカード・シンキングは一種のアナロジカル・シンキングか
あるものから抽出したアイデアを他のものに転用して組み合わせることで新しいアイデアを生む方法は、一種のアナロジー思考(細谷功)のようにも見えます。
すべての思考は「類推(アナロジー)」から始まる。――
新しいアイデアは「借りてきて組み合わせる」ことで生まれる。では、どうやって既存のアイデアを「借りてくる」のか? そこで用いられるのが、アナロジー思考である。 アナロジー(類推、類比)とは、このときの「借りる力」である。たとえば、他業界のヒット商品の「コンセプト」を借りてくることで新たなヒット商品を生み出せることがある。他人が気づかないような遠くから借りてくるのに必要なのが抽象化思考力であり、これがアナロジー思考の肝となる。 また、アナロジー思考のプロセスにおいては課題設定力や仮説思考力も駆使することになる。地頭力のひとつともいえるアナロジー思考力はどのようにトレーニングすれば鍛えることができるのか? ベストセラー『地頭力を鍛える』の著者が示す「考える」ことの原点。(Amazonの内容紹介より)
アナロジー思考(アナロジカル・シンキング)とは、簡単に説明すれば
- アイデアが必要な領域(例えば自社の新規事業)=「ターゲット領域」に対して、それに類似した、アイデアの「借り先」(例えば他業界)=「ベース領域」を見いだす
- もともとよく知っているベース領域(他業界)の考え方が、「ターゲット領域」(自社の新規事業)でも使えるのではないかと関連付けて考えることで新しいアイデアを生み出す
というものです。
例えば、
- 鉄鋼業界で新興のミニミルにビジネスを明け渡したUSスチールの教訓から、低価格帯で敗れないようセレロン・プロセッサーの販促を強化したインテル
- 中古車販売チェーンを展開カーマックスを展開した家電量販店サーキット・シティ
- 「スーパーマーケット」という業態から発想を得て「金融スーパーマーケット」メリルリンチに育てたチャールズ・メリル 同じく「スーパーマーケット」から「トイザらス」や「ステープルズ」を生み出したチャールズ・ラザラス
このような実践例があります。
方法論で言えば、アイデアカード・シンキングもアナロジカル・シンキングもその機能や構造は似たようなものですが、あえてアイデアカード・シンキングとして分けた理由は、「実践的かどうか」、この一点に尽きます。
アナロジカル・シンキングとはこのようなものだ、と頭で理解したものの、それを使いこなすことができるまでには、修練が必要です。たとえば、一生懸命セミナーや勉強会に出ても学んだことを実践できていない、という人が多いのは、アナロジカル・シンキングができていない、ということなのです。
学んだこと(ベース領域)が、自分の仕事や生活(ターゲット領域)にどう適用され活かされるのか、それを考えていないのです。
そもそも学ぶとはなにか
小さい頃に読書感想文をよく書きましたが、読書感想文の下手な子というのは、
「今日はこういう本を読みました。主人公がこうこうこうしてこうなりました。楽しかったです。」
という文章を書きますが、一方で、読書感想文のうまい子というのは、
「この本からこういう事を学んだ。主人公の体験を自分に置き換えて自分はこういうふうにしていきたい」
と行動目標に落としこんで実践していくわけです。
このように、日常的に生じる問題を解決するために、身の回りのものから知恵を抜き出し、それを問題解決に役立てることが学びの目的なのであって、じゃあどうやって知恵を抜き出すのか、というのがアイデアカードが解決した、アナロジカル・シンキングにないポイントと言えそうです。
アイデアカードは学ぶ力を身に付けるツール
アイデアカードの演習を通じて、身の回りの何の変哲もないガラス瓶や街路樹の葉っぱからも知恵を取り出し、学ぶことができるということを体験しました。
ところで、そもそもアイデアを取り出す方法を知らないとそこから学ぶことすらできません。そこから何かを取り出せるかどうかを、それを取り出すための方程式やフォーマットを持っているか持っていないかで大きな違い(=差)が出てくるのです。
アイデアを取り出すフォーマットをカードを引いて楽しみながら身につけることができる、それがアイデアカードであり、アイデアカードで取り出したアイデアを他の領域に転用したり応用したりする発想法がアイデアカード・シンキングなのです。
《 学ぶ心 》
自分ひとりの頭で考え、自分ひとりの知恵で生みだしたと思っていても、本当はすべてこれ他から教わったものである。
教わらずして、学ばずして、人は何一つ考えられるものではない。
幼児は親から、生徒は先生から、後輩は先輩から。
そうした今までの数多くの学びの上に立ってこその自分の考えなのである。
自分の知恵なのである。
だから、よき考え、よき知恵を生み出す人は、同時にまた必ずよき学びの人であるといえよう。
学ぶ心さえあれば、万物すべてこれわが師である。
語らぬ木石、流れる雲、無心の幼児、先輩のきびしい叱責、後輩の純情な忠言、つまりはこの広い宇宙、この人間の長い歴史、自然の理法がひそかに脈づいているのである。
そしてまた、人間の尊い知恵と体験がにじんでいるのである。
これらのすべてに学びたい。
どんなことからも、どんな人からも、謙虚に素直に学びたい。
すべてに学ぶ心があって、はじめて新しい知恵も生まれてくる。
よき知恵も生まれてくる。
学ぶ心が繋栄へのまず第一歩なのである。
『道をひらく』 松下幸之助、PHP研究所 (1968/05)、p216より
アイデアカード・シンキングで新商品や新サービス、新規事業を発想する勉強会
アイデアカード・インストラクターとして、まったく活動ができておりませんでしたが、今回アイデアカード・シンキングを学ぶことによって、その発展性にあらためて気づきと学びがありました。
アイデアカードの使い方を練習するワークショップ開催に合わせて、その続編として、経営者や事業者、または企業の企画開発担当者を対象にした、アイデアカード・シンキングで新商品や新サービス、新規事業を参加者みんなで発想する勉強会を定期開催したいと思います。
場所はまず拠点となる相模原を中心に都内を考えています。
準備出来次第アナウンスしますので、楽しみにしていて下さい。
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