社長ブログ

特殊な材質の刀を使っているのか?という海外の方からの質問

「あなたの刀の切れ味はとても鋭い。何か特殊な素材から作られているのか?」

最近海外の方からよくこのような質問を受けます。

刀ではなく技なのです。

しかしながらそう見えてしまうというのは私の腕がまだまだ未熟な証拠です。

また、実際のところそのような疑いが出るくらいに、特殊な刀を使って斬っている人は実はとても多いのです。

ここからはとても英訳が困難なので日本語のみで書きます。

日本語ですらニュアンスが伝わるか疑わしいテーマです。

私は真剣斬法研究家として、据物斬りを専門とされる剣士の方々が近年こぞって使用する畳斬りに特化した幅広薄刃刀身の使用を禁止しており、伝統的な製法で作刀された真面目で標準的かむしろ幾分華奢な刀を使用しています。

その方が稽古になるので自ら設定したマイルールです。

幅広薄刃というと、幅広であること、薄刃であることのどちらか一方だけが取り上げられて是非が議論されたりしますが、論点は幅広であることでも薄刃であることでもなく、その比率です。

一般的に刀の厚みを表す「重ね」と幅を表す「身幅」の比率の幅が大きいほど斬りやすいと言われています。

「重ね」は実は正しくなく、正確には鎬の高さのことなのですが、鎬の高さを一言で表す言葉はないのでそこまで含めて「重ね」と言っている場合が多いようです。

畳表を斬る人の中でも一度斬った畳をその場に静止させて残した上の部分をさらに斬る技斬りと呼ばれる斬り方を行う人達の多くは、畳の静止しやすさのために刀の平地の肉を削ぎ落とし、鎬を削り、全体的に薄くなるように研ぎをかけ、身幅と重ねの比率を意図的に高くします。

こうすることで斬り抜けが格段によくなりますので技が決まりやすくなります。競技に勝つためには当然の発想と言えますが、競技で勝つため、もしくは技斬りを行うために日本刀らしさを損ないチューンする行為に疑問を呈する剣士は多くいます。

目的が違えばそれに適した刀のありようはとうぜん変わりますので、私個人としてはそれに対して異論を唱えるつもりも否定することもありません。私は競技者でもありませんし、技斬りすることを目的としておらず、刀によって異なる斬り方や方から生まれる刀法を研究する人間なので、できるだけ日本刀を本来の形のまま使用したいと思っているだけです。

日本刀で斬るというのは本来とても難しいことです。ただの薄い鉄板であればまだしも、そうではなく、楔形をしているため真っ直ぐ刃筋を通して斬り込むことは困難を極めます。

だからこそ地道な修練が必要なのです。

「日本刀は簡単に斬れる」

と仰っている剣士の方もいますが、こう言ってる方の中に素晴らしい業前をお持ちだなぁと思える方はただの一人もおられません。

文化伝承の一端を担う一人としては、日本刀とはデリケートで扱いも操作も難しいということを伝えていかねばと思っています。

繰り返しになりますが、斬ること自体は目的ではありえません。

斬ることを目的にしてしまうと、斬れる刀を使えば良いという方向に発想が及びがちです。

普通にやったら斬れないことを知り、そこから工夫して技術を練磨していくことが大切だと思っています。

また、海外の剣士が使うような、日本刀の形を模した特殊鋼の巨大ナイフも使用しません。これらはそもそも日本では所持することも禁止されています(登録できない)。

現代に作られたこれらの刀モドキは古来の日本刀と較べて畳表以外も格段に斬れることをわたしはよく知っています。(可能ならば研究のためにわたしも一振欲しいくらいです!)

わたしの所持する一振りに室町時代の古刀である備州長船(太刀大擦上)があります。この刀身のHRC硬度を測ったところ私の日常使いする家庭用包丁や刃物類の半分くらいの硬さしかありませんでした。

しかしこの刀はよく斬れます。良く曲がりますが刃溢れなどしません。踏ん張りがありしなやかです。

まさに斬り味が違うのです。切れ味ではなく。

わたしが自らに使用を禁じている刀を使えば曲芸師のような技斬りは比較的容易です。まして、据物でなければありえないであろう対象物の前に足を止めて対峙し、刀を抜いた状態から振りかぶってきっちり刃筋をつくってから斬るのは容易過ぎてわたしの目的においては稽古する意味を見出せません。

曲芸斬りすることも斬ることと同様目的ではありません。

こうした派手な斬りを競技化して優劣を競うところもございますのですべてを否定するつもりはありませんが、少なくとも私にとっては出来て当たり前の特殊な刀を用いてそれらを実現したからと言ってなんの価値もあるわけではないのです。(競技という非日常で平常心を保ち実力を発揮することの意義はとても素晴らしいことだと思っています。しかしながらわたしは武術研究家であってスポーツ選手ではありません。)

ですが、伝統的で標準的な刀を用いて困難な状況からそういった技で斬ってみせることには少しだけロマンと美学を感じています。

なぜなら、困難の逆転こそが武術の本義であると思っているからです。

繰り返しますが、私は私が武術を行う目的において適した個人的な刀の使用法を述べているだけであって、据え物斬りを行うその他大勢の剣士の皆さんを批判しているわけではありません。

 

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後藤 健太

後藤 健太

サムライ社長/株式会社コンセプト・コア 代表取締役

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