【読了の目安 : 4 分】
ある人からわたしの言動に対し「あなたはわたしを差別している」と指摘を受けた。
わたしはコンサルタントなので「差別化」は好きだが「差別」はしているつもりはない。倫理的にも好ましく無いと信じている。
なぜその人がわたしの言動に対し「差別」と感じたのか、文脈を振り返ってみたところ、どうも「差別」と「区別」を勘違いしている気がした。
「差別」はたしかに上から目線のニュアンスを含んでいる。彼(または彼女)がそれを「差別」と受け取った時、たとえそれが「差別」でなく「区別」であったとしても、自分で自分を貶めているだけかもしれない。
差別と区別を巡る議論
よく「差別」と「区別」のちがいについて議論になることがあるが、「差別」と「区別」は本質的には一緒だ。辞書を引けば「差別」とは「区別」することという記述がある。
そもそも「分ける(別ける)」というのは人間(脳)の基本的な機能だ。ジャンルやカテゴリーを分類することで理解を正確かつ深くしようとする。
しかしながら、その「分ける」という行為に非合理性を認識した時には「差別」という言葉が用いられ、合理性を認識した時には「区別」という言葉が用いられている。
たとえば、女性に選挙権がないと「差別」になるが、子供に選挙権がないのは「区別」となる。
差別の辞書的な意味
差別 さべつ
discrimination
特定の個人や集団に対して正当な理由もなく生活全般にかかわる不利益を強制する行為をさす。
その差別的行為の対象となる基準は自然的カテゴリー (身体的特徴) の場合もあれば,社会的カテゴリー (所属集団) の場合もあるが,いずれにせよ恣意的な分割によって行われる。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
さ べつ [1] 【差別】
①ある基準に基づいて,差をつけて区別すること。扱いに違いをつけること。また,その違い。 「いづれを択ぶとも,さしたる-なし/十和田湖 桂月」
②偏見や先入観などをもとに,特定の人々に対して不利益・不平等な扱いをすること。また,その扱い。 「人種-」 「 -待遇」
③〘仏〙 「 しゃべつ(差別) 」に同じ。
しゃ べつ [1] 【差▽別】
①〘仏〙 平等に対して,それぞれの物が異なる独自の仕方で存在している姿。さべつ。
②区別すること。
「人我(にんが)の-も分り憎くなる/風流仏 露伴」
三省堂大辞林より
区別の辞書的な意味
区別 くべつ
distinction
事象の間にある差異を識別し,認定すること。理性の本質的機能の一つであり,科学的営為の基本。
類と種差による定義に立脚するアリストテレス的方法や分類学,「われ区別す」 distinguoを合言葉として営まれたスコラ学の弁証法から,判明性 (区別されてあること) を真理認識の本質的要件としたデカルトを経て,現代の精神諸科学に方法的モデルを提供している言語学における弁別特徴の追求にいたるまで,学問史を通して区別の方法的重要性は確認されている。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
く べつ [1] 【区別】
あるものと他のものとの違いを認めて,それにより両者をはっきり分けること。 「 -をつける」 「公私を-する」
三省堂大辞林より
区別と判断
戦略を策定する時、対象によってどんな戦略や戦術を適用すればよいか判断する必要性が生じる。対象がなんたるかは、ある一定の判断基準があって、基準より上なのか下なのか、右なのか左なのか、内なのか外なのか、白なのか黒なのか判断することになる。
その結果如何で全体戦略と部分戦術が確定されるわけだ。
対象が人である場合、たとえば情報の伝え方であれば、言い方や言葉の選び方、会って口頭で直接なのか、メールや電話、手紙や第三者を介して間接なのか、ある人には言って、ある人には言わないなど人によっては言う言わないがあったりする。
今回の「差別」問題はまさにこの「あの人には言わないのに、なぜ自分だけ言われるのか」という不平不満から生まれた。言った者の立場から言わせてもらえば、一方は言う必要があり、もう一方は言う必要がなかった、というだけのことである。もっと正確に言えば、言う必要がなかった方には、以前に同じことを言い伝え済みであったから二度重複して同じことを言う必要がなかっただけである。
もう以前に一度伝えているので、再度伝える必要はないグループとして「区別」したのであって、一方でこっちは言わなきゃダメなグループだから「差別」して言ったわけではない。
まして、一方が可愛くて一方が憎くて言ったわけでも当然ない。
区別と差別化戦略
「差別」と「区別」を巡る「誤解」に対する弁解はこのくらいにしておくとして、「区別」することによってとるべき「差別化戦略」は変わってくる。
区別とは、自と他、もしくは、比較対象となるAとBの間にある差異(違い)を識別してはっきり分けることである。経営戦略においては、自社と競合他社との分析になるし、商品やサービスの比較分析になる。
このように、「区別」することは企業間、もしくは商品やサービスの間でも当然起こることで、ましてその商品やサービスを買う消費者は、その「区別」をもってどこの商品やサービスを購入するのか「判断」しているのである。
競合分析による「区別」は様々な視点から「何(どこ)がどのくらい違うのか」を抜けもれなくチェックする必要がある。
この記事へのコメントはありません。