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家業から企業へのステージによくある悩み
家業から企業へ、事業の成長に伴い、組織も拡大成長していくステージにおいて増える悩み相談の筆頭が、人の問題である。
部下も増えるが上司も増える。彼らもまた、マネジメントする側という意味において「新人」に変わりない。
そんな新人リーダーの中には、「自分たちはなんのためにその事業を行うのか」という目的を明確に設定できる人とできない人がいる。
明確な設定ができる人が立てた目的は、何を目指すのか方向性が明確で、「是非その目的を実現したい」とメンバーを巻き込む力強さがある。
一方、明確に設定ができない人が立てた目的は、方向性が見えず、メンバーを行動に駆り立てる力強さに欠ける。
この違いは何か?
目的遂行のための3つの意識
メンバーを巻き込み行動に駆り立てる方向性のはっきりした目的設定には、次の3つの意識が関わっている。
- 問題意識
- 危機意識
- 当事者意識
問題意識
自分たちを取り巻く環境に対し、何か問題は起きていないか、変化はないかと常に周囲に注意を向けている状態。
危機意識
自分たちに今起きている問題や脅威を察知している状態。
当事者意識
今起きている問題や脅威を解決するために、自分が責任をもって行動しなければならないと覚悟している状態。
この3つの意識は、一連の思考的流れとして密接に関連している。つまり、問題意識がなければ、危機意識を持つことは出来ない。危機意識がなければ当事者意識を持つことはできないのだ。
あなたの指示が空振りする理由
リーダーであるあなたの指示が空振りに終わる理由がここにある。
リーダーシップをうまく発揮できないリーダーは、メンバーに対し、問題意識と危機意識を伝えずに、いきなり当事者意識を持つよう指示する。
問題意識と危機意識がないとは、先に説明したように、目的不鮮明で方向性がわからないため、メンバーが行動を起こす理由が見当たらないのだ。
同様の理由で、部下のモチベーションが低く、なんとかしてモチベーションをアップしようと、様々なリーダーシップ研修やセミナーに参加しているリーダーに多いのが、目的不在の指示命令である。
目的と方向性が明確で、「是非それを実現したい」とメンバーと合意がとれているのであれば、メンバーは当事者意識を自然に持つようになるし、モチベーションだって勝手に湧いてくる。そもそも、モチベーションは内発的なものであり、他人がどうこうできる問題ではない。
目的と目標
未だに目的と目標を誤解しているリーダーもとても多い。あなたは目的と目標がどう違い、どう関連しているか説明できるだろうか。
部下を思うように動かせないと感じているあなたは、もしかしたらトップで話し合った結果だけをトップダウンでメンバーに伝えて、その仕事をする目的や目標設定をメンバーに丸投げしていないだろうか。働く目的や、仕事の目的はメンバー各自で勝手に考えるものだと思っていないだろうか。
確かに、目標はメンバーが各自で設定するものであり、それに向かって努力する道標となる。けして他人が、まして、リーダーが設定するのものではない。
ところが、マネジメントの機能不全を起こしている多くの企業では、リーダーが部下の目標設定をしてしまっている。【ノルマ】という名の目標設定である。それは部下が達成したくてワクワクドキドキするものだろうか、胃が痛くなるだけの単なる【ノルマ】になっていないだろうか。
一方で、目的は事業の定義に関わることで、全社的に共通している必要がある。目的がメンバーによってバラバラな場合、強直して仕事などできるわけがない。ところが、目的はなんですか?と聞かれて即答することはできるだろうか。
問題意識なくして危機意識はなく、危機意識無くして当事者意識はない。そして、当事者意識無くしてメンバーを行動に駆り立てる目的はない。
目的がいまいち弱いと感じた時、問題意識・危機意識・当事者意識を順番に確認してみよう。
当事者意識を阻害する3つの要因
当事者意識を醸成するためには、問題意識、危機意識を順番に醸成していけば良いと書いたが、これはあくまで論理上の話であって、頭で理解してそのとおり簡単に実現できたのならばなにも苦労はない。
多くの場合、問題意識と危機意識を頭ではわかっているけれども、当事者意識を実感として持つことがなかなかできないで苦労する。このような当事者意識の欠如を招く三大原因として、
- 自己正当化(自分のせいじゃない)
- 現実逃避(なんとかなる)
- 無力感(自分にはできない)
の3つが挙げられる。
こういう場合、まず、組織が陥っている状況の全体構造(システム)を明らかにすることを通じて、問題は自分以外にあるという他責・他者非難の姿勢から一人ひとりが問題を生み出している張本人であるという自覚を生み出す。
次に、現在の延長線上に起こりうる最悪の結末を明らかにし、「このままではヤバイ」という、健全な絶望感を呼び覚ます。
健全な絶望感を持つことで今までの習慣や環境から得ているメリットを手放し、新しい行動に伴うリスクや結果を引き受ける覚悟が生まれる。トップによって強制的に与えられるコミットメントではなく、一人ひとりに選択の場を提供する自発的なコミットメントであるため、高いモチベーション発揮し、一人ひとりが持つポテンシャルを引き出される。
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