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現代武道のダークサイドとは距離をおいて
武道の世界というのは、風上にも置けない者たちの巣窟で本当に質(たち)の悪い連中が跋扈している。それというのも、スポーツ化されたものはともかく、実質的に優劣をつける手段を失った武道というのは、もっぱら口舌戦を繰り広げるしかなくなってきているからで、一方で、時代を経れば経るほどにごく狭い世界で分派新派が増え複雑化するなかで、他流に差別化を図ろうとする企てが事態をより悪化させる方へ作用してしまっている。
そんな腐敗した世界とは縁を切る目的もあって、また、そういった世界はもうたくさんだ、懲り懲りだという人達のための開かれた気持ちのよい場所として、仲間とともに日本の伝統武芸、特に日本刀(真剣)で斬るという機能的側面およびその身体技法に着目した研究所を立ち上げる。
これは研究所であって武道団体では断じてない。流派も流名も名乗らないしいかなる流儀流派ともの無関係の公正中立な独立機関として存在する。
それに先立って門を叩いた金山剣術稽古会は、今や私にとって欠かせない稽古機会となっている。わたしは何をするにも先頭に立ってしまう気質であるから、損な役回りを引き受けることが日常的だ。ネガティブでダークなエネルギーや事態への対処は無駄な労力と時間、そして費用を要すのでできるだけ避けたいがそうもいかない。
そんな戦場にあって、荒みきった心を汗とともに洗い流してくれる洗浄の場がこの稽古会だ。わたしが一人稽古以外で唯一納得の行く稽古ができ、そして、学びや気づきが豊富で、心地の良い疲労と同時に、心身が癒やされる場にもなっている。
本来の武道とは、また、現代において武道を行う目的、武道の役割というのは、こういうところにあるのではないかと思わずにはいられない。稽古に来れば来るほど、その道に染まれば染まるほど、心身ともに疲労し荒んでいく一方の現代武道とは一線を画する。
レッドオーシャンにブルーオーシャンを見出す
わたしの本業である経営戦略の世界には、有名なブルーオーシャン戦略というのがある。競争熾烈で同質的差別化を繰り返し血まみれの低価格競争に陥っているレッドオーシャン市場に対し、ライバルが少なく高付加価値高利益な市場をブルーオーシャンと呼んでいる。
二人集まれば他流批判、他人批判が日常茶飯事の腐敗した武道業界はまさにこのレッドオーシャンに属しているといえるかもしれない。他人から見れば批判しあっているもの同士が一体何が違うのか見分けがつかず、どっちが良いか悪いか、強いか弱いか、上か下か、先か後か、など些細な言い合いをしている(同質的差別化)。
その中にあって、そういう血みどろの争いには疲れた、もう懲り懲りだ、という人達のための心のオアシス、ブルーオーシャンをつくりたいというのがわたしの願いでもあり、わたしにとっての金山剣術稽古会である。
稽古備忘録 2017年9月14日(木)
さて、そんな心のオアシスである金山剣術稽古会、本日は脚鍛錬稽古からスタート。ストレスによる急激な体重の増加と減退したエネルギーのせいで下半身を虐め抜く脚鍛錬稽古はえらく辛い時間だった。
杖術
杖術では新しい技を稽古した。
上段扇抜き、その応用技である、旋打(せんだ)。そして繋之型(つなぎのかた)。
扇抜きにおけるMP関節の使い方がとても重要だ。この手の内の使い方は実のところ、抜打ちの片手剣の手の内と共通点がたくさんあり、この新鮮な驚きはすかさず金山先生とシェアした。こういう次元のお話というのは分かる人にしかわからない。
有名流派の杖道などを学んでいる人はおそらく全くピント来ないと思うし無縁かもしれないが、金山剣術稽古会で行う杖は特にこのMP関節をよく使う。これによりあの丸い棒を最小限の動きで最大のパワーを発揮するよう運用する。扇に抜いた後の払い上げなど、信じられない威力で、相手の杖を跳ね飛ばしてしまうほどだ。
バットのようにフルスイングしても相手の杖を跳ね飛ばすなんてことはなかなかできないと思うが、手首ではないMP関節の握り込みともう一方の手首の巻き込みと返しによる跳ね上げは凄まじい威力だ。
手首の巻き込みというのは正しくないかもしれない。腕の回転だろうか。ちょうど空手の正拳突きやボクシングのコークスクリューブローを放つときのような動きに近いかもしれない。
MP関節の握り込みを支点としもう一方の腕の捻り。この動力を掌の素肌感覚で制御する。手の内の養成、素肌感覚の鋭敏化、これこそが杖術を学ぶ意義なのだと確信を深めているし、そこに着目して間違いなかったと再確認している。
こういうのは個人的な感覚なのでどんなに具体的に言語化したところで本人にしかわからないし誰にも読み解けやしない。したがって備忘録の範疇となる。
繋之型では、頭に物を載せた状態でそれを落とさずに業ずることができるかを練習した。じっとり妙な汗をかいた。
剣術
つづいて剣術。いつも通り正面斬り(斬割)の稽古をしてから、新しい練習として「脇構えからの発剣」を行う。脚から動いていく感覚がまだつかめないでいる(頭ではわかっているが身体化していない)。したがって初動が肩に出てしまうのでオコリを捉えられ対処される。後半に初動を伺わせない動きが何度かできたがまだまだ。
剣術の最後は、「裏交差からの斬付」を行った。正面から敵が斬りつけてきたのを下段の構えから裏交差に押さえつけでそのまま峰を滑るようにして敵の首に斬りつける。
刀にしっかり体重を載せて敵を崩さないとならないのだがこれが難しい。刀の捌き方、手の内、脚の動きなどどれをとっても未だ全然なので剣体の一致を見ない。継続課題。
抜刀術
締め括りは抜刀術。前回に引き続き、懐月(かいづき)と津波返しを行った。今日はいつもの2尺4寸から4寸5分に少し長く調整した居合刀を持参した。懐月は抜刀の瞬間に鋒が体の外にブレがちなのだが、刀を長くすればブレにくくなることがわかっている。やはり5分長いだけでも大分ブレなくなったし、当初つかっていた3寸5分の刀とくらべてもだいぶ制御が効きやすい気がしている。
先日2尺5寸1分の真剣で懐月をおこなった動画を収録した。こちらの記事を参考までに。
【長寸抜刀術】2尺5寸1分/赤松太郎兼嗣斬り初め/斬法稽古20170906
とはいえ、道具で調整しているうちはまだまだで、どんな道具を使っていても身体の運用ができさえすればそれに合わせてしっかりと制御できるはずであるから、引き続き練習あるのみ。
津波返しは膝が痛かった。前回懲りたので膝サポーターを持参しようと思っていたのに忘れてしまった。
斬法稽古 2017年9月15日(金)
以下の動画は後日に床貼りたての新しい道場での初稽古の様子。津波返しでの斬法稽古も収録した。
一本目は、斬法(きほう)初学者のための参考収録で、新団体のためにあらたに制定した基本7法斬りと抜打3法から逆袈裟斬り。
つづいて2本目は、金山剣術稽古会で習った抜刀術、「津波返し」での斬法稽古。