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利益とは何かを考えるための2つの質問
会社にとって利益とは何か?
利益といえば、利益=売上ー経費という公式を思い浮かべる。利益を最大化するには、売上を最大化し、経費を最小化すればよいという簡単な公式だ。
ここで以下の2つの質問に答えていただきたい。
売上を最大化したとき、お客様は喜んでいるだろうか
経費を最小化したとき、会社の未来をつくる経費まで減らしていないだろうか
減らしてはいけない3つの経費
利益は公式に則れば、売上から経費を引いたものだから、利益を最大化するには経費を最小化すれば良いとは上述のとおりだ。しかしながら、経費は単に減らせば良いというものではない。
経費には、
- お客様を喜ばせるための経費 (顧客満足費)
- 会社の未来をつくるための経費(研究開発費)
- 会社の人財を育てるための経費(教育研修費)
という”減らしてはいけない3つの経費”がある。これらはお客様を喜ばせ、会社の将来をつくる経費だ。
この3つの経費を削ってしまうと、会社の未来そのものと将来的な売上も削っていることになる。
したがって、利益=売上ー経費という公式は、実はとんでもない間違いかもしれなと氣がつかなければならない。
利益は幻であり異常事態
ピーター・F・ドラッカーは、利益を幻であり、利益が出るのは異常事態だと言った。その意を抜粋していみると、
利益(プロフィット)とは人間の努力によって生まれ、損失(ロス)という正常な状態を覆すことから生ずる。
物事がすべて純粋な確率(プロバビリティ)に基づいて進行するとすれば、正常な状態とは損失である。
すなわち、利益とは発生しないはずである。
こうした正常の確率を逆転させる仕事こそ、経営者やマネジャーの任務なのである。
なるほど。どんなものであれ経年劣化するのである。したがって、物事は時間が経つにつれて、いつでも「損失」していくものなのだ。
しかしながら、企業活動というのは、そのあるべき自然の姿を覆して「利益」を生み出していく作業となる。ところで、誰しも「楽して儲けたい」という気持ちがあると思うが、利益が出ること自体が、自然界における「異常事態」なわけであるから、一生懸命頑張って苦しんで利益が出ているのは、むしろ「正常」な状態と言え、楽して儲かってるのだとすれば、それは「異常」だと言える。
利益とは条件でありコストである
ドラッカーは、こうも言っている。
利益とは目的であってはならない。利益とは社会の公器としての企業が存続していくための条件でありコストである
ただし、目的ではないが、企業が社会から必要とされているかどうかのモノサシにはなるとも言っている。もし、利益が出ていなければ、企業が社会から認められていないということになる。たから、利益が出ていることは大切なのだ。
ただし、忘れてはならないのは、利益を出すために仕事をするのではなく、利益が出るくらいの仕事をするということだ。
利益はウンチ
利益はカスでウンチだと言ったのは、年輪経営で有名な、伊那食品工業の塚越会長だ。利益とは、人件費を払った残りカスであり、人件費を払うために利益が必要なのだ、したがって、人件費を払ったあとの利益はカスなのだと。
さらに、利益はウンチであって、会社を健康に保てばウンチは自然に出るのだと。
会社が何を食べているのか、どんな状態なのか、社員を幸せにしているのか、それが大事なことであって、残りカスであるウンチばかり追いかけても、けしていい会社にはならない。
ここに塚越会長がカンブリア宮殿に出演した際も抜粋を記録しておく。利益についても語られているので大いに参考にされたし。
小池栄子:かんてんぱぱは大人気商品だが、一部商品を除いてスーパーに置いていないがどうしてか。
塚越寛:1つはかんてんの原料はどこにもある代物ではない。需要が急激に伸びると原料の価格がすぐに跳ね上がってしまう。もう1つは値崩れをしたくない。社員が一生懸命作ったものだからこれだけはどうしても頂きたい。
塚越寛:「売上げ = 成長」ではない。売上げが上がったからといってその会社が潰れない保証はない。パイに限界のある業界では急いではならない。その裏には「確実に」という言葉がある。村上龍:本の中で利益とは健康な企業が出すうんこと書いていたが。
塚越寛:排出物を多くするために食べているわけではない。健康になるため。健康だと良い結果も出る。企業も同じ。企業も稼いだお金は栄養として会社の隅々まで行き渡らせなければならない。一番大事なことは社員のモチベーション。十分な給料を払わなければならない。研究や社会貢献もしなければならない。残ったものが利益。
村上龍:カンブリア宮殿に出る方は利益を目的としてはならないと言う。だが利益がないと会社は潰れてしまう。利益と社員のモチベーションはどういったバランスになっているのか。
塚越寛:バランス感覚は経営者は持っていなければならない。お金の使い方は経営者に課せられた大事な判断力。究極にはうんこの考え方だと利益が出るようになるはず。
村上龍:年輪経営とはリストラなどをしないように暴飲暴食を控えるという理解で良いか。
塚越寛:ある業種がその市場を食べつくしてしまうと違う業界に行く。そこで競争が起こる。適正な競争と下等競争というものがあると考えている。適正な競争は大いにやるべきだが、価格にまで踏み込むのは下等競争である。村上龍:かんてんというマーケット規模が小さい会社だからこそ年功序列や終身雇用が出来るのではないかという人もいるのではないか。
塚越寛:経営者とはそういう理由を見つけて自己満足したいだけ。そんなことはない。激しいときには40社もの競争があった。どうすれば単なる価格競争から抜け出すことが出来るのかを考えた。得た結論は新しく用途開発をすること。価格競争をしたことによって、シェアを上げたわけではない。
村上龍:売上げが上がらない場合にはリストラや人件費の削減しかないという考え方の人が多い気がするが。
塚越寛:もしこれから経営をしようと思う人がいるならそれだけ慎重にならなければならない。10年、20年先を見る必要がある。私のような中小企業はこれから起業する人の参考になると思う。
村上龍:ブームに乗るのは良くないとあったが。
塚越寛:物が売れるという背景にはブーム、いわゆるトレンド。トレンドには絶対に乗ってはならない。トレンドを自分の力と勘違いするのではなく、自分の力を付けなければならない。小池栄子:歯の型を取るゲルもかんてんで出来ているようだが、かんてんも新しい使い道がこれからも出てくるのか。
塚越寛:かんてんを掘り下げるということは昔からやってきた。その方が経営としては上手く行く気がする。
村上龍:年輪経営とは地味で同じことの繰り返しではダメなのか。
塚越寛:踏襲は仕事ではない。常に変えなければならない。変えるというのは必ずしも先に変化していくのではない。原点に帰るということ。会社を作った頃まで戻らなければならない。これがイノベーションだと思う。
村上龍:本の中で「セレンディピティ」という言葉が出てきたが。
塚越寛:当社では20数年前からその言葉を掲げていた。追い求めていたものとは違う結果が出るということ。これはダメだと捨てたらそれっきり。それを考える力が「セレンディピティ」。
塚越寛:ファン作り。これが商売では物凄く大事なこと。そのためにいろいろなことをやっている。だからガーデンを開放したり、綺麗にしたり、あの会社が好きだと言ってくれる人を増やすためにやっている。利益だけを求めるとファンは減る。
最後に塚越会長が番組でご披露くださった座右の銘をご紹介します。
この記事が利益とはなにかという理解の一助になれば幸いだ。健康なウンチを排泄できるいい会社を増やしていきたい。そして当社もまた健康なウンチを排泄する永続して繁栄する会社でありたい。
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