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「インバウンド消費」をきっかけに、日本人が日本の観光地や店、モノを再評価する動きを「リ・バウンド」と名付けたとのこと。 ブランディング戦略の世界ではよく「逆輸入」として使われるメジャーな手法がありますが、質的には似たようなものでしょうか。 紙面には、伏見稲荷大社や、梅田スカイビルの空中展望台、浅草の人力車、伝統芸能の「剣舞」の鑑賞や体験ができる京都の「サムライ剣舞シアター」など、日本らしいものから、訪日客のSNSの投稿から評判が拡散したという飲食店や買い物スポットまで、多数の「リ・バウンド」の例が掲載。 飲食店や買い物スポットの取材は、主に口コミ情報サイト「Yelp」が2015年6月に発表した「外国人に人気の東京スポットベスト30」というランキングを参考に行われた模様で、浅草「花月堂」のジャンボめろんぱん(上記ランキング6位)、秋葉原の中古ゲーム専門店「スーパーポテト」(同16位)、渋谷の「アバウトライフコーヒーブリュワーズ」(同20位)の名前が挙がっています。 識者いわく、
欧米人の集まるスポットに洗練を感じる日本人は多いほか、美術館でも建築物でも『世界的に評価を受けた』と言われると日本人は行きたくなるもの日経MJ 10月14日号 1面 訪日客対応コンサルティング「やまとごころ」の村山慶輔代表
メガネを掛け替えることで見えてくるもの
自分のことは自分でよくわからないように、自国のことは自国の人間にはなかなかわかりづらいものです。それが「当たり前」で「普通」の状態なので特別な感情や違和感を感じることがないからです。 一方で異邦人から見ると自分たちのスタンダートとのギャップを敏感に感じ取り、それが驚きと共に新しく新鮮に思えるのでしょう。 こういった現象を我々経営コンサルタントやマーケターは、ヒットを生みだす時に意図的に利用することがあります。 視点を変えて違う角度から見なおしてみたり、フォーカスするポイントをずらしてみたり。地域活性の手法もまだまだ使える
こう考えてみると、インバウンドだリ・バウンドだとカタカナで難しく騒がなくても、訪日客が求めていることは自国とのギャップに起因する驚きや新鮮さであり、その隔たりが大きければ大きいほど「日本らしい」という評価に繋がるのであって、この視点で商品やサービスを洗練させていくことが大切だとわかります。 地域活性(まちづくり)において、特産品や独自性を打ち出すときの視点と一緒です。 こういったギャップを戦略的、意図的に実行するには当然、訪日客のバックグランウドについても精通しなければなりません。比較なしに独自性を語ることはできない
コンサルティングする際には必ずその会社やお店、商品やサービスの特徴や独自性についてお尋ねします。この時、特徴や独自性として熱意や姿勢を上げるところが多いのですが、そこに独自性や特徴は現れません。もちろん大事なことですが、プロであれば「当たり前」のことでもあります。 「当たり前」のことに他者とのギャップや差異を感じ取ることはできませんから、結局、「よくわからない」「わかりにくい」ことになっていないでしょうか。 No.1の自信がある(正確には、他と比較してどこにも負けないというポイントを見つける)のであれば、No.2以下との違いはどこか、なぜ自分たちだけが実現できるのか、なぜ他には真似できないのか、きっちり説明できなかればなりませんし、お客様にわかりやすい形で表現されていて、共通認識が確立されていなければなりません。 この共通認識が確立されてイメージ共有されている状態がブランドの成立とも言えます。 こういった事を明確にできないのは、自分のことしか見ておらず、他者を知らないからです。戦略の古典中の古典ですが、未だ色あせない名言があります。彼を知り己を知れば百戦殆からず。 彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。 彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し。 (敵と味方の実情を熟知していれば、百回戦っても負けることはない。敵情を知らないで味方のことだけを知っているのでは、勝ったり負けたりして勝負がつかず、敵のことも味方のことも知らなければ必ず負ける) [amazonjs asin="4532169259" locale="JP" title="最高の戦略教科書 孫子"]ちなみに、ビジネスの場合比較対象とすべきは、自分たちが競合と考える先ではなく、お客様の頭の中に選択肢として残る先のことです。 もし貴社が二者択一の最終局面で選ばれたり選ばれなかったりしているのであれば、その相手をよく研究しましょう。
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