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対象物から一寸(約3センチ、1インチ)の距離から寸断する寸勁(すんけい)。
中国拳法の発勁に端を発する。勁(けい)とは運動量であり、寸勁というときは、一寸の距離で威力を伝える、という意味合いとなる。
斬法において寸勁というときは、畳表などの斬る対象から一寸の距離に刃を構えそこから振りかぶることなく一気に寸断する技を指す。
この度、寸勁のさらに上級技となる、刃が畳表に密着した状態から寸断する寸勁零式を成功させたので記録として残しておく。ちなみに零式とは後藤が命名したオリジナル技である。
実のところ寸勁は固定・無固定の別に関わりなく、左右ともに3年前に成功させている。
零式に至っては右に関しては固定・無固定ともに成功しているが、左は固定していても成功したことはなかった。この場合の成功とは、1回斬ったことがある、斬れたり斬れなかったりする、ということではなく、十中八九いつでも斬れる状態を意味する。かつ、一畳巻きが基本で半畳巻きは含まない。半畳巻きは斬ったうちに含めない。
後藤研(後藤真剣斬法研究会)では「再現性」を徹底的に重要視している。再現性のないものは体系化された理論からは程遠いし、まして、斬れたり斬れなかったりというのは実力が至らないことの証明でしかない。よく調子が悪いとか斬るのは久しぶりだとか、練習サボっていたから、と斬れない言い訳をする人がいるが、単に実力不足なだけだ。
平成29年11月29日(水)に初めて固定・左を成功させ、翌日30日(木)に無固定・左を成功させた。
斬り方のポイントはここには詳述しない。後藤真剣斬法稽古会の参加者にのみお伝えしている。
この技は地味であるためにイマイチその魅力を伝え得ない。
しかしながら、何事もごまかしの効かないシンプルさの中にこそ技や術は凝縮されているもので、この技もその類である。
また、どういったシーンで有効な技なのか分からないという声もある。上品に居合の型を抜いているだけの人や、見た目の派手さに気を取られて斬ることが目的になっている人には到底理解できないと思う。
この技は剣術の技だ。超近接した状態では当然鍔迫り合いとなるだろう。鍔迫り合いにならなくとも、思いっきり振りかぶって斬撃を繰り出すことは不可能な間合いにおいて、有効な斬撃を放つには。
こういうシーンにおいて一切の振りかぶりなくただ突きつけられた刀が恐ろしい程の斬撃力を持ち得たとしたら。そういう技である。
寸勁を抜き打ちからの連続技に組み込むとこうなるだろうか。