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経営戦略と企画開発の株式会社コンセプト・コアは相模原に拠点をおいています。地域交流の一環でこれはと思うイベントにはなるべく参加するようにしています。今日は日曜日で休業日ではありましたが、専門の食の分野でもありましたし、本格的に勉強もしたことがなかったコーヒーがテーマでしたのでちょうど良い機会に恵まれました。
お誘い頂いたSYACの皆様、ありがとうございます。
SYAC(シャック)は相模原ユース・アクション・サークルの略で、橋本公民館と有志の運営委員によって開設される青年教室です。年間を通じて様々なテーマで講師を招いて教室を開催しているそうです。
コーヒーの2大品種
今回はMW Ko-Hi-の山本浩司さんを講師にお招きしてのコーヒー教室「コーヒーを通してフェアトレードについて学ぼう」でした。
我が家では最近ベトナムコーヒーがブームなのですが、コーヒーには大きくロブスタとアラビカという2種類の品種があって、ベトナムコーヒーはロブスタという品種が主体だそうです。
ロブスタ(原産地はコンゴ)は病気には強いが味はいまいちと言われていて、インスタントコーヒーや缶コーヒーによく使われているそうです。ベトナムコーヒーのあの独特のフレーバーは豆の品種というよりは焙煎に秘密があるそうですが、どうやらバターやココナッツミルクで香りをつけながら焙煎するのだとか。
ベトナムと言えばブラジルに次ぐ世界2位のコーヒー産出国ですが、1位のブラジルではアラビカ種(原産地はエチオピア)が主体で、こちらはロブスタ種の反対で味はいいですが病気に弱い特徴があるのだそう。世界に流通するコーヒーの7〜8割ははアラビカ種だそうです。
テレビCMでよくアラビカ種100%などと宣伝しているのを見かけますが、ロブスタ種とアラビカ種をブレンドしたりして味を調整するわけですね。イタリアンコーヒーはロブスタ種をブレンドしてイタリアコーヒーらしさを出すのだとか。
アラビカの2大品種
ティピカとブルボンがアラビカ種の2大品種と言われていて、ティピカが在来種、ブルボンが変異種・改良種と言われています。
アラビカ在来種には、ティピカの他にスマトラ、モカ、ブルー・マウンテン、コナなどが代表的であり、アラビカ変異種・改良種には、パカス、マラゴジッペ、パカスとマラゴジッペの掛け合わせのパカマラなどがあります。
この他、最近オークションでブルー・マウンテンを超える高値で取引され一躍注目されているゲイシャという品種がありますが、これはエチオピア原産の野生種で、アラビカ種の原種ではないかと言われています。
コーヒーの格付け
まるでワインのようですが、SHB(大きさ)、SHG(標高)、AA(大きさ)などの格付けがあるそうで、国によって規格が様々だそうです。SHB規格はコスタリカやグァテマラで、SHG規格はホンジュラスで、AA規格はタンザニアで使われているとのこと。
コーヒーの生産処理
コーヒーの生産処理にもコーヒーチェリーそのまま天日干しで乾燥させたナチュラル、パルピング(外皮と果肉除去)してから発酵させるウォッシュド、パルピング(外皮のみ除去)してから果肉を残して乾燥させるパルプトナチュラルと3つの方法があるそうです。
コーヒーの歴史と現状
コーヒーと言うと、コーヒー栽培とは馴染みの薄い我々からすると、非常に過酷な労働風景が思い浮かびます。石油に次ぐ世界第2位の巨大産業であるコーヒーは、歴史的に買い叩きの憂き目にあってきました。
価格低下が品質の低下を招き、品質の低下は顧客離れを招き、顧客離れは更なる原価割れを引き起こします。こうして採算の合わなくなったコーヒー栽培は、農園放棄という最悪な結末を迎えます。
今回のコーヒー教室のメインテーマはフェアトレードですが、講師の山本さんはフェアトレードそのものが重要、ということではなく、フェアトレードを支える仕組み、さらにその先にあるダイレクトトレードが重要だとお話されていました。
フェアトレードを支える様々な仕組み
スペシャルティコーヒー
プレミアムなコーヒーの定義をし、高品質なコーヒーを生み出すための仕組みで、特にトレーサビリティ、サスティナビリティ、クオリティの3つについて厳格な評価基準を定めます。
カップ・オブ・エクセレンス(Cup of Excellence)
生産者と消費者をむすぶためのコンペティション組織で、世界中のコーヒー豆が審査され、インターネットオークションで世界のコーヒー業者が入札します。オークションで決まった買い取り代金はすべて生産者に渡されます。
カップ・オブ・エクセレンスを取得すると、それを取得した生産者のもとに直接取引を求めるバイヤーが集まります。わざわざオークションに出品しなくても もっと高値で全部引き取るから、ということです。こうしてフェアトレードを超えてダイレクトトレードへの道が拓けてくるわけです。
フェアトレードからダイレクトトレードへ
今でこそ日常的に美味しいコーヒーが飲めるようになってきましたが、歴史的には、嗜好品の運命から常に経済の浮き沈みの影響を受けてきたのであり、そのため品質の低下を引き起こしました。
品質の低下を抑止するため、まずは生産者の持続可能な生活を支えるための仕組みとしてフェアトレードが発達してきました。さらに、生活の最低を保証するだけではなく、スペシャルティコーヒーやカップ・オブ・エクセレンスなどの、高品質なコーヒーを永続的に生み出すための仕組みを生み出すことで、頑張っても頑張らなくてもそこそこから、頑張ったらその分さらに収入が得られるようになりました。
それでもまだ、全体からするとごく一握りしかとれない高品質なコーヒーは、安定的に供給されないために巨大資本や大手コーヒーチェーンが取り扱うには主流にはなりえず、そのため、小さなこだわりの珈琲店によるダイレクトトレードが発達するという、裾野の実に広く複雑で豊かな構造を生み出しました。
単に最低限を保証しそこそこのレベルを維持するのではなく、より高品質を志向してチャレンジャブルな市場を作り上げた、ここに学ぶべきポイントを見た気がします。
コーヒーを通じて学んだこと
ビジネスの世界では、こと顧客獲得は至上命題ですが、つまりそれは相思相愛のお客様とのダイレクトトレードをゴール設定しているわけです。
コーヒーもそうであるように、フェアトレードによって生産者を守ることは目標の一つに過ぎず、最終的には生産者と消費者が直接取引できるようなダイレクトトレードを目指しています。
ビジネスの世界においていきなりダイレクトトレードを志向したところでうまくいかないのは、顧客が取引すべきと判断するに値するだけの客観的な認証や評価が不足していることと、そういった情報提供がなされていないからです。
したがって、コーヒーの世界で起きたこととと同じように、ビジネスの世界でも商品やサービスの低価格化が進み、品質の悪い商品やサービスが横行するようになっています。
人々の生活をよりよくする商品やサービスは、それを提供する事業者が永続的に生活に困らず、サービス供給していけるように、スペシャルティコーヒーやカップ・オブ・エクセレンスのような客観的な認証や評価基準が必要かもしれません。
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