【稽古備忘録5月】杖術、剣術、抜刀術エトセトラ

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【読了の目安 : 5 分】

会社の決算作業もありワタワタしていた5月。

こまめに稽古備忘録を書けなかったので一月分まとめて。

5月1ヶ月の武術研究を一言で言えば、「武術的なるものの探求」と言えるかもしれない。

というのも、活動方針を明確にすればするほど、それを発信すればするほど、考え方や価値観の異なる人々からのネガティブキャンペーンは勢いを増すのであって、そのため余計に自分のやろうとしていること、目指す方向性とのコントラストが際立ってくるのだ。

結果としてその方向性で間違っていないと確信を深め、それと共に自信がみなぎってくる。

したがって、方針を明確にして発信し続けることは、その確からしさを世に問うということであり、仮説検証を高速で回すこととなるので、いち早く真理に到達できる可能性が高まる、ということにもなる。

武道は不言実行とおっしゃる先生がいらっしゃるが、有言実行の人がなんでも言葉にしているわけではなく、その逆に不言実行の人が完全に沈黙を保っているわけはない。

あえて言葉にして自身を鼓舞することもあれば、言わずに黙ってやることもある。ケースバイケースなのであって、時と場合によるものをそれと固定的に定義し断定することは出来ない。

言葉にして発信することで他者からの第三者的フィードバックを得ることができる。もちろん何でもかんでもというわけではなく、ものによってそうしたほうが良さそうな場合はそうする。そうやって柔軟に状況を操作する。

では順番にいこう。

杖術では、わたしの物覚えの悪さを身に沁みて実感することとなった。

最近まで二十個の技で構成されていた二十連円打は三十連円打となり一気に10も手数が増えた。

まず手順を覚えるのに苦労する。覚えてもどこかで淀みが生じてそこに囚われているうちに忘れてしまう。

そんなことをずっと繰り返している。

苦手な挙動も明らかになってきた。

杖はともかく手先から足先まで繊細で全体的な操作を要するために、どこかに局所的に意識が集中するとそれが居着きとなり鈍さを生じる。

そうしたことに大変苦しめられた。

クリアできたことといえば、突きが突きでなく打ちの軌道になってしまう要因を突き止め改善できたことだ。半身を明確に発見したのであるが、これによりできることになったこと、より高度な動作を要求されようになったものなど様々である。

このようにたった一つの気づきにより全体的に異質なものを実現できるようになるから武術稽古は面白い。

次に剣術。右肩の故障により悪化した四十肩に悩まされた。真っ向切りは肩より上の振りかぶりができないし、仕方ないので斬り下ろしは袈裟斬りばかりとなったが、こういうときはそれをとことんやれというメッセージと捉え黙々と振り続ける。

斬る動作は何を持とうが得意なのだが、剣術には受けや崩しという技もある。あえて敵の攻撃に合わせて斬り結ぶ、そのことによって敵の情報を盗むという技もある。

特に短刀術はそうなのだが、手にするものが短くなればなるほど間合いは近くなり体術の要素が濃くなっていく。私のルーツは空手なので打つ、受け流すというのは比較的得意であるが合気的な動きは苦手としていて、今まさに探求中であるので、短刀術の稽古が楽しくてたまらない。

最後に抜刀術。5月終盤にして大きな気付きが3つあった。一つは私の右肩の不調の原因と断定しても良い、抜刀時の右手の運用方法の間違いだった。スムーズに抜くための工夫として肘を張る動作を研究していたが、こうすることで右肩の前方部に無理な力が加わる。肘、というより脇は締め、きっちり拝み手に抜くようにすると体に無理なく抜刀ができる。

脇は締めるが懐は深く、というのがミソで、頭部を前方に平行移動させ顎下のゆとりを確保するようにする。顎は引けと教わってきたがどうも少し違うようだ。顎を引いて喉を締めてしまうと上半身に強張りが生じる。顎を上げるのではなく前方に平行移動することで顎下にゆとり、これを懐深くと表現したのだが、そのようにすることで実に無理なくリラックスした上半身の状態をつくることができる。

この状態を作ってから抜くとスムースに抜ける。

2つ目は、居合、抜刀術は座技、座法をやらないと居合・抜刀術でない、ということに気づいたことだ。右肩の故障も相まって一時的にスランプに陥っていたが、改めて集中的に座法に取り組んでみた結果、下半身を不自由な状態にすることで正しい上半身の運用を導き出すことに成功した。

不自由の中に自由を見出したとでも言おうか、自在な上半身を手に入れた気分になった。

3つ目は、鞘引きをする左手の運用方法だ。抜刀時に左手で鞘を操作することを当たり前と思っていたし、そう習ってきたが、実はこれは間違いであると気づいた。左手は鞘引きの方向にのみ運用する。左手で操作して柄頭を抜く方向に向けたりなどしない。余計な方向に力を加えると刀が引っかかる。

抜刀の方向調整は、左手ではなく体捌きで行う。

3つのポイントとも上半身の使い方に収斂する。もちろんこの他にもいくつもポイントはあるが、今のわたしにはこの3つのポイントがブレークするのきっかけとなり、結果、抜刀時の音が小さくなり、気剣体の一致を見たときには無音で抜けることもあるようになってきた。

スピードも格段に早くなった。

これらはあくまでも現段階の気づきでありステップアップのための一つのマイルストンでしかない。したがって読者の皆様の各ステップにおいて必ずしも参考になるものではないだろう。人それぞれに課題が会って、それをクリアするために稽古を積む。できるようになってくると次なる課題が見えてきて、ブレークスルーのためにまた異なる運用方法が必要になってくる。

これが武術稽古の面白いところでもある。

ともかく理想の剣を実現するために来月も邁進したいと思う。

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後藤健太

【サムライ社長】
斬法総合研究所所長/真剣武士道指南役
株式会社コンセプト・コア代表取締役/経営コンサルタント
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