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仕事が猛烈に忙しくまったく備忘録を書くことができなかった。
2月から3月の月末月初を乗りきりなんとか時間を確保できたので2月後半分を一気にまとめておく。とはいえ細かいことはもう覚えていないので印象に残ったことだけかいつまんで。
まず、金山剣術稽古会。ここでは杖術、剣術、抜刀術を行っている。
すべてが有機的に関連し、私の専門分野である斬法に生きてくる。
杖術は当初「手の内の養成」を目的にはじめたのだが、思いもかけず「身体の養成」になっている。武術界隈では「身体を練る」などと言う。とくに、コンディションの調整機能といったら杖術に比肩するものは今のところない。
もはや棒(杖)は片時も手放せないほど愛着が湧いている(ただし、すべての杖術や杖道に同様の効果がみられるわけではないので注意)。
身体の養成といえば、2月の進展で特筆すべきは肩甲骨だ。
流転落とし打ちに始まり、3段抜き、ついに30連円打にまで昇華した旧20連円打。
これらは肩甲骨の運用がなければ生まれてこなかっただろう。
肩甲骨の動員で何が変わったかと言えば、杖の動きだけにフォーカスすれば、圧倒的にコンパクトで力強くなったことだ。その分身体は大きな動きをしているように見える。つまり、杖の無駄な動きが排除され最短最速で動くから杖を中心に身体が動かされているようにも見える。
とにかく、基本的な動きだけでも身体を解す効果があるので、高齢者にもお勧めだ。
剣術ではなんといっても指先から始まる手続きに進展があったために全体的に大きく進化した。正面斬りは正中線をビシっと捉えて外さないし、エネルギーロスが減ったことにより、素振りが心地よくて仕方がない。ゆっくり運用しても手続きが簡略化されているためかすごく早い。速いのではなく早い。100メートルを走るのか、30メートルを走るのか、くらい違う。加えてオコリも見えないので、相手の反応は遅れますます高速の技に感じる。
無駄のない身体運用はそのまま出力となって展開されるから斬撃力も自然と増す。
女性であっても木刀をブンブン鳴らして振れるようになっている。
抜刀術は総合技だ。発剣の手前、つまり、構えの段階ですべては決着がついている。抜刀術や居合では「鞘の内」などと表現するが、つまりは発剣の前段階の話である。
抜かれたらお終い。
そう感じさせられる「構え」「事前手続き」が重要だ。
よく身体全体の力をだらんと抜いてリラックスするのが良い、みたいな指導をしたりされたりしているのを見かけるが、とんでもないことだ。
抜刀術における発剣の手前とは、さながら銃で言えば撃鉄が起こされ引き金に指が添えられている状態であるし、たとえ無構え(自然体)であっても瞬時に発剣できるほどに気力と体力が充実していなければならない。
とある先生は「鞘の内にエネルギーを凝縮させ一気に抜き放つ」などと言っていたが、わたしにはよくわかる。
鞘の内のエネルギーは溜めて溜めて一気呵成に抜き放つから「怒涛岩礁を砕く」のであり、「気勢を送る」などと称してゆっくりソロリソロリと抜いてしまっては威力も迫力もあったものではない。それは、スパークリングワインのコルクを音をさせずにスカしッ屁のように抜くようなものだ。
具体的な技については一切触れないが、つまりは、すべての学びや収斂の賜物が余すところなく鞘の内に溜め込まれ、一気に抜き放たれる、ということである。
続いて、後藤真剣斬法研究会。
2月からは斬法講習会を開始したこともあり、研究生以外にも斬法研究の機会を部分的に提供するようになった。普段他流で稽古をしている経験者が主に参加するということもあり、ある時「受け流しからの斬り返し」をテーマに研究したことがある。
これが思いの外好評で、早速自主研究会にも導入したところ、研究生の評価も上々でみなハマってしまった。
抜刀してからの剣術技で左右表裏(陰陽)で4パターン、鞘の内からの抜刀術で左右表裏(陰陽)で4パターン、合計8パターンの受け流しからの斬り返し技を稽古型として制定した。
手の内が目まぐるしく入れ替わるし、一種とくとくな身体運用を必要とする。しかも深めようと思えばいくらでも深められる奥深さもある。しばらく研究することになりそうだ。