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虎ノ門ツインビルにて、プレゼンを行った。
地方から日本を変えるという共通の思いで超党派で集結した若手地方議員が組織する龍馬プロジェクトにて、事業説明をさせていただいたのだ。
今回召喚されたのは、地域活性化に寄与する事業を行う5社。
当社では、「液体急速凍結技術を応用した地域食材の高付加価値化による特産品づくり支援事業」というタイトルでプレゼンさせていただいた。
発表順番は、5番目の大トリであった。聴衆の集中力も極限に来ており、さらに残り時間が限られているという中で、急遽発表の内容を変更。「ナイフを入れた時に肉汁があふれるハンバーグはおいしくない」という話をきっかけに、我々の提案がいかに魅力的なものであるかをお伝えした。
プレゼン終了後、名刺交換の列ができたことが手応えとして実感を得た。
会社紹介
当社(株式会社コンセプト・コア)は、地域活性化のために、地域に根ざした地域密着・地場産業の経営支援をする目的で2012年に設立した。
地域に根ざし誠実に事業を営んでいる小規模企業のほとんどは、もう少し大きな規模の企業であれば当たり前に保有しているであろう経営企画室の機能を有さない。また、過去に起きた問題の対処に追われ、未来創造のための先手を打つことができていない。つまり、戦略をもたず行き当たりばったりの事業運営をしている現状がある。
当社は、そんな企業のための経営戦略の立案や、企画開発を行う、外部の経営企画室的存在として機能している。
具体的な業務の中身はといえば、企業毎の独自資源(ウリとなる知識・技術)を引き出し、それらを分解・再構築することで、新事業・新商品・新サービスを企画開発・導入支援・運営指導をしたりするわけだ。
本事業は、地域密着で地域に根ざした地場産業、とりわけ地方の行政を対象に企画開発・導入支援・運営指導する新事業の一つである。
事業の背景
地域活性化の定石といえば、まちおこし三種の神器と呼ばれる、
- 土木工事(公共事業)
- 特産品(名産)
- 温泉(観光)
が有名だ。
モノよりコト、コトよりヒト、と言われるようになった現代において、これらまちおこし三種の神器はすでに過去の遺物とされているという意見もあるが、”他人頼り(ヒト頼り)ではいけない”、ということで改めて見直されてきている。
本事業は、その土地特有の地域食材を用いて特産品(名産)を作ることで、地域経済の活性化や雇用の創出を目指す、という提案であるが、「食」に纏わる事業に当社が熱心に取り組む背景には、当社の代表である筆者が、もともとプロの料理人であり、飽くなき食の探究心から、農業団体やその生産物や加工品、また、それを販売・提供する小売店や飲食店のプロデュースまで手がけている、食関連事業のプロフェッショナルであるという自負からだ。
課題は「長期保存」と「鮮度維持」
食関連事業を推進するにあたって、かねてよりの懸案事項といえば、やはり、「長期保存」と「鮮度維持」である。
日本の食料自給率(カロリーベース)は、昭和40年度には73%だったのが、平成25年度には39%まで落ち込んでいる。ここでその問題の核心や原因についての議論は割愛するが、日本固有の地域色豊かな地域食材を守り、後世に伝えていくためにも、なるべくそういった国産食材を摂取するようにし、かつ、食料廃棄を抑制することで自給率の向上に寄与する狙いがある。
食材を鮮度維持したまま長期保存するには、「凍結」は避けて通れない。しかしながら、「冷凍食品」=まずい、というのは飲食に関わるものであれば拭いがたき固定観念でありイメージだ。
食品の「急速凍結」に注目
そもそも冷凍食品がまずいのには理由がある。
食肉や魚介では、その7~8割、青果では8~9割以上を水分が占めている。食品を冷却していくと、この水分が固体である氷に変化する。水が氷になると体積が膨張する。食品の細胞中に大きな氷の結晶ができると細胞は破壊され、その状態のまま凍結されてしまう。それを解凍すると壊れた細胞から出た水分がドリップとして流れ出し、水分とともに旨味成分や栄養が失われ、食品自体の歯ざわり(食感)も悪くなるわけだ。
ところで、氷の結晶が小さければこのダメージは小さくなる。水が氷の結晶に変わる温度は氷結点と呼ばれるが、氷結点は純粋な水であれば0℃だが、不純物の濃度が高いほど氷結点は低くなる。食品中の水分にはアミノ酸やミネラルなどが溶け込んでいて、食品の氷結点は食品ごとに異なるが、ほぼ-1~-5℃の範囲に収まっている。
氷結晶が生成する温度帯は「最大氷結晶生成帯」と呼ばれ、この温度帯を長い時間をかけて通過するほど、氷結晶は大きくなる。このような凍結を緩慢凍結といい、最大氷結晶生成帯を短時間に通過させて氷の結晶を小さく留める凍結を急速凍結という。当然ながら、緩慢凍結した食品よりも急速凍結した食品の方が品質は良い。
液体急速凍結に出会う
食品の鮮度維持の目的で、長期保存できる方法を模索していた折、ついに現時点で最高品質の凍結を実現できるテクノロジーと出会う。
それまでは、電磁波や低周波、静電気をもちいて食品の細胞中の水分を振動させて凍らせず、過冷却状態で鮮度維持する技術など、空気を用いて凍結するエアブラストに何かのテクノロジーを付け足す方法ばかり探っていたが、そもそも熱媒体を期待から液体に変えてしまうとう発想の転換だった。
空気と液体とでは熱伝導率が理論値で20倍ほど違う。空気は断熱性能が優れていることでも知られ、 そもそも凍結には向かない。それでも空気凍結が主流であるのには、「手軽さ」のためである。
さまざまな凍結方法
参考までに、凍結方法には以下のものがある。
(1)空気凍結法
1. 管棚式流動空気凍結法(セミエアーブラスト式凍結法)
-35~-45℃の寒冷な管棚式凍結室の天井付近に送風機を取り付け、空気の風速を毎秒1~2mに流動させて食品を凍結する。
2. 送風凍結法(エアーブラスト式凍結法)
凍結室の上部または側面に空気冷却機を設置し、-40~-55℃に冷却した空気を送風機でダクトによって毎秒3~5mの速度で凍結室の一方から送風し、棚付き台車上の食品を凍結する。
(2)接触凍結法(コンタクト式凍結法またはプレート式凍結法)
中空の金属板に-30~-40℃の冷媒を流し、冷却した金属板の間に食品をはさんで凍結する方法。装置が小型で扱いやすく、ケーキ状のものを急速凍結するのに適している。
(3)ブライン凍結法
食塩、塩化カリウムなどの濃厚溶液(ブライン)を-17~-40℃に冷却し、食品を漬け込んで凍結する方法。どんな形状・大きさの食品も凍結できるが、食品を直接漬けると、微量のブラインが食品中へ浸透する欠点がある。
(4)液化ガス凍結法
液化窒素や液化炭酸を食品に噴霧して凍結する方法。超急速凍結ができ、連続再生も簡単にできるが、液化ガスがあまり低温のため、食品にき裂がはいることがあり、また運転費が高くつく欠点がある。
本事業で採用した凍結方法は、3番のブライン凍結の一種だ。
最高の凍結食品をつくる3要素
最高の凍結を実現する3つの要素は頭文字をとって3Sで表される。
- Speed(速さ)
- Size(大きさ)
- Span(長さ・期間)
この3つが揃うことが、最高の凍結食品をつくる条件になっている。
事業の目的と概要
単に、その地方特有の地域食材を発掘し、スポットライトを当てるというのでは、従来のまちおこしとなんらかわりはない。本事業の目的は、あくまでも産業をつくり、地域経済の発展に寄与し、雇用を創出することにある。
そのため、発掘した地域食材を日本の伝統調理技法を用いて旨味を最大限に引き出し、行政を巻き込みながら、特産品へと仕立ててることを企てた。
つまり、本事業は、
- 地域食材
- 伝統調理
- 地方行政
の3つがそろって初めて実現する
また、単に採れたて新鮮な地域食材を新鮮なまま加工するというのでは何の芸もない。上述したように、日本の伝統調理技法を用いて旨味を最大限に引き出した地域食材を、最新のテクノロジーによって急速凍結、長期保存することよって、年間安定供給できる体制を整えようというわけだ。
すばわち、本事業の肝は、液体急速凍結という単体技術ではなく、伝統と革新の複合技術による高付加価値食材の創出にある。ここで言う複合技術とは、
- 伝統調理
- 急速凍結
- 長期保存
というわけだ。
以下、プレゼンの内容をスライドシェアにアップしておいたので、ご覧いただければ幸いだ。
尚、当事業で用いる液体急速凍結機「新感鮮(しんかんせん)」はコチラ
https://ccore.co.jp/shinkansen/
本事業に関するご質問・お問い合わせはこちらから受け付けている。興味を持たれた地方行政の皆様、地域密着地場産業の皆様はどしどしお問い合わせいただきたい。