正藍染剣道袴の洗濯と色止め

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【読了の目安 : 4 分】

私は真剣斬法研究家でありどちらかというと剣術家や居合道家に近く剣道家ではないが剣道着を愛用している。

普段の稽古用には使い勝手の良さからテトロン製やポリエステル製の居合道着を多用するが、ここぞというときには正藍の剣道着を身につける。

袴は剣道師範用の袴で、10000番、12000番と2着ある。

今回8000番を入手したので藍染衣類独特の着る前の下処理、つまり色止めを施した話をする。

その前に番手について。

番手による違いは生地の目の詰まり具合である。

番手が大きいほどきめ細かい生地となりそのため染まりやすくなり、濃く、重くなる。

剣道用の袴が好みである理由は3つある。

1つは、サイズ(号数)が0.5刻みであること。

私のような身長173センチ胴長短足体型の場合、居合用袴の場合、24号だとつんつるてんだし25号だとごくたまに袴の裾を踏みつける。

24.5号がジャストサイズなのだが居合用袴にはそのサイズがない。しかしながら競技人口が居合の比ではない剣道ではサイズ展開もきめ細かい。そのためジャストサイズの袴を身につけることができる。

ところが、剣道袴の場合、藍染の綿袴は全体的にかっちり頑丈な作りになっているが、テトロン性など安い袴が全然駄目だ。腰紐などはフニャフニャでカチッと着こなしができない。

したがって、普段の稽古では居合袴の25号を主体に此処ぞという時に剣道用正藍面袴を着用する。

2つ目は色。

正藍染めの色はご存じ「藍色」。藍は人類最古の染料といわれている。我が国においてももっとも身近な色の一つであると共に、鎌倉時代にはもっとも濃い藍色を「勝色(かついろ)」と呼び、縁起担ぎに多用したころから「武士の色」と呼ばれるようになり、室町時代には広く一般庶民にまで広まりそこかしこでよく見かける色となった。明治にもなると日本を訪れた外国人により「ジャパンブルー」と称賛されるようになった。

居合といえば黒か白の居合道衣が主流のようだが、私はそんなこんなで武士の色、勝色、藍色にこだわっている。当然、ここぞというときは勝色を身につける。

また、正藍染めの道着は色落ちによりなんとも言えぬ風合いが出てくる。この風合はテトロン性の道着にはない魅力である。

3つ目は着心地。

袴の正藍の綿袴なら道衣も綿道衣で当然正藍染めである。コットンの着心地の良さはいまさら私が説明するまでもない。居合の先生クラスには品格のために正絹の着物袴、紋付袴などを着用する人を多く見かけるし、正絹の衣擦れの音もたしかに良いのだが、個人的には、上下正藍の剣道スタイルが好みである。

上下が藍染めである理由は、武士色であるだけでなく、そもそも藍染の機能的価値によるところも大きい。藍は汗の酸化に強く布地を丈夫にして長持ちさせる。防虫効果や抗菌性も持ち合わせており、汗疹やタダレ、不快な臭いも防ぐ。つまり、藍染は堅牢性・防虫性・抗菌性に優れるというわけだ。

以上、サイズ、色、着心地の3点において剣道用道衣と袴を愛用している。

ただし、デメリットがないわけではない。

居合の稽古着として主流でるテトロン性の居合道いや袴はなにしろメンテナンスが楽ちんだ。

洗濯機で洗ってシワを伸ばして干しておけばアイロンいらずだし、何しろ安い。複数用意しておけば毎日の稽古でもへっちゃらである。稽古頻度が多い人の場合テトロン製の稽古着は欠かせないだろう。

私の場合、普段は、上はジャージ生地の紺色剣道衣に下はポリエステル性の居合袴である。

剣道用正藍綿道衣と袴は正藍染めであるが故に色落ちする。他の洗濯物と一緒に洗濯できないし、なにより洗濯機で普通に洗うことができない。(きちんと畳んで洗濯ネットで手洗いモードは可能。その場合も他の衣類とは一緒にしないこと)

基本は手洗いだし、陰干しする必要もある。

コットンは吸水性に優れるが最近の高機能素材のようにすぐ乾くわけでないので汗をかく時期はどんどん重くなる。濡れた道衣は体温を急激に奪っていくので体調を崩すリスクもあろう。

藍の色止めに関してはお酢を使う方法がポピュラーであるが、たしかに化学式的には色止め可能ではあるが、経験的には、色抜けが多少良くなる程度にしか実感していない。

酢を導入したところで染料が水に溶け出し続ける限りはすすぎをやめられないし、酢の臭いが気になる。結局酢の臭いが取れるまで念入りに水をくぐらせることになる。

最初はとにかく念入りに水にくぐらせて染料を落とすしかない。

正藍の綿袴は使いだしの下準備を始めその後の維持管理もテトロンの比ではなく重労働だ。したがって、そういう意味でもここぞという時にしか着用しない。

しかしながら、使う前のその面倒な下準備が着用時の気の引き締まりというか、気分的効果がある気がする。実は道着を着用する前段階の過酷な処理、それも稽古の一環なのかもしれない。むしろそう思うことで有意義になる。

今回の8000番の袴も風呂場で何度も水換えしながら押し洗い、踏み洗いを念入りに行った。絞るとシワがつくので絞らずバケツに入れてそのまま北側のベランダで陰干しした。

出番が楽しみでならない。はやくお前を身につけて刀を振りたい。

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後藤健太

【サムライ社長】
斬法総合研究所所長/真剣武士道指南役
株式会社コンセプト・コア代表取締役/経営コンサルタント
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