政府が国民に直接マスクを配布する「ただ事ではない」行動の意味

では、マスクさえあれば本当に3密3行が実現しうるか。答えはNOだ。

たとえば、マスクが市場に十分に供給され近隣で通常通り買えるようになったとして、すべての国民がマスクを買い求め、着用してくれるだろうか。世の中にはマスクは不要と思っている人がまだまだ多い。必要ない、意味がない、効果がない、と思っている人々にいくらマスク着用を啓蒙してもマスク着用は徹底されないだろう。

そこで、政府は考えた。(*あくまでも筆者の空想)

政府から各家庭にマスクを配布してはどうか。

政府から直接マスクが届く。上述したように「緊急性」を想起させ、かつ、着用の「義務」も感じさせる。これに加えて、今までマスク着用を啓蒙しても、「マスクがない」「マスクが買えない」ということを理由にマスクを着用しなかった人々の言い訳を封じることができる。

そういう言い訳をする人々というのは、たとえマスクがあっても、マスクが買えたとしても着用しない人々である。マスクがあってもつけるつけないはあくまで個人の自由なのだ。そこまではコントロールすることはできない。

つまり、市場に十分な量のマスクが共有され、近隣のお店で自由に買えるようになったとしても、マスク着用率を大幅に上げることはそこまで期待できないのだ。

ところが、政府から支給されたマスクであったらどうだろう。

政府は各家庭にマスクを確実に届けた。各家庭にはマスクがある。という既成事実を作った上で、政府から届けた「ただ事ではない」マスクを、国民は国が全世帯に予算を使って配っているのだから「ただ事ではない」と受け取り、よくわからない「義務感」と共に着用する。

これによりマスク着用率は、近隣のお店で普通に買えるようにするよりもぐんと高まるだろう。

政府から配布された(=ほとんど義務レベルで着用推奨の)マスクが行き渡った段階で、「つけない」判断をしたり、「つけていない」人は、その時点で「異端」「変人」扱いされ、社会からは排除されるような方向になるかもしれない。

こういうことを心理的に嫌うであろう人々は「マスクを着用する」という行動に自然と誘導されることになり、この行動が、マスクをすることによる心境の変化を促し、手洗い・うがいも含めた3行の習慣化という行動変容を引き起こすのだ。

自分はそんなことない、と思う人がいても、それが主流となってくれば事態は激変する。

かくして日本政府は、マスクを各家庭にたった2枚配布するだけで見事に国民意識と行動の変容を実現し、コロナウイルスの感染拡大防止を現実としたのである。

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後藤 健太

後藤 健太

サムライ社長/株式会社コンセプト・コア 代表取締役

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