はじめに
問題解決集中講義とは
問題解決集中講義は、毎月開催している達成会議に参加する人のための基礎知識を学習するための講義です。達成会議では、参加者それぞれの問題を参加者全員で解決することで、目標達成や理想実現のサポートをしています。
そのため、参加者には問題解決力が求められます。
知っていることとできることは違うように、問題解決力を真の意味で身につけるためには、座学で知識を得て理解することはもちろん、実践を通じてできるようになる必要があります。
したがって、問題解決集中講義で基本的な知識を、達成会議で実践練習を継続的に行うことで、真の問題解決力を身につけることを目的としています。
実践の5段階
問題解決に限らず、あらゆる実践には次のようなステップがあります。
- 知る
- 分かる
- 行う
- できる
- 分かち合う
という5段階です。これを「実践の5段階」といいます。この実践の5段階に照らしあわせてみると、
- 知る、分かる→問題解決集中講義
- 行う、できる、分かち合う→達成会議
という役割分担になっています。
問題認識の3段階
問題解決というと、やや専門的というか、コンサルタントが調査分析など、難しことをして解決策を提案するというようなイメージがあるかもしれませんが、やってることはもっとシンプルで、単に悩みの解消です。
しかしながら、この「問題解決集中講義」が、もし、「お悩み解消徹底討論」というタイトルだったらどうでしょうか。なんとなくドロドロして重っ苦しい印象がないでしょうか。
解消すべき悩みというのを、解決すべき問題と言い換えるだけで、なんとなく後ろ向きで重っ苦しい印象から前向きで軽い印象に変わるのを感じてもらえたと思います。
ここにすでに、問題認識の3つのプロセスを見出すことができます。つまり、
- 問題の発見
- 問題の対象化
- 問題の階層化
という3つです。
1.問題の発見
悩みと聞いた時、そのイメージはどんなイメージでしょうか。どす黒く、なんとなくドロドロしていて、纏わりついて離れない、モッタリとして重いイメージがないでしょうか。少なくともさらっとはしてないと思います。
こんなドロドロもったり思っ苦しいものを「さぁ解消しよう!」と爽やかに言ってみてもなかなか解消できるものではありません。解消できないからこそ「悩み」が「悩み」たる所以なわけです。
つまり、
悩みは悩みのままでは解消できない
というのが、悩みの本質であり原則であり、ジレンマなのです。
さらに、
悩みは人の数だけ存在する
とよく言うように、一般化できず極めて個別的なものであることが、より解消を困難にしています。
そして、
悩みとは何かが分からないと悩みは解消できない
という問題が根本にあるため、世の中から悩みが消えることはありません。
- 悩みは悩みのままでは解消できない
- 悩みは人の数だけ存在する
- 悩みとは何かが分からないと悩みは解消できない
これらを仮に悩みの三原則としましょう。悩みを解消するためには、この悩みの三原則を乗り越えなければなりませんから、
悩みを解消するために悩みを問題化する
必要があるのであり、したがって、
問題は解決される前に発見される
ことになります。
2.問題の対象化
問題の対象化とは、以前、問題解決できない3つの理由に書いたとおり、「これが問題ですよ」と明確に特定し、解決する対象として定義することです。
悩みとは、
- アクセルに対するブレーキ
- 欲求に対する障害
- 現状打破に対する現状維持
- 理想に対する現実
ということが言えますから、そうすると、対象化の失敗(問題の捉え違い)は、そもそも理想的な状態と正しい現状把握がなされていないために発生しているとわかります。
あなたはどうありたいのか。どこに行きたいのか。そして、今、あなたはどこにいてどういう状態なのか。もうゴールは目の前だろうか。そうでないならゴールと現在地はどのくらいの距離があって、その差を埋められない阻害要因は何なのだろうか。
こういうことを突き詰めていって、問題を立体的に全面的に把握することで問題の対象化は達成されます。
3.問題の階層化
問題を引き起こす原因には解決できる原因とできない原因があります。解決できる原因を一般的に内因といい、解決できない原因を外因といって区別します。
内因とは、自分で解決できることで、それに対し、外因とは自分ではどうにもできないこと、つまり、時代や環境、景気や他人、制度や法律などのことを言います。
外因とは、自分ではどうにもできず、受け入れざるを得ないという意味で、内因の上位階層に位置しています。したがって、問題解決においては、解決できない原因(外因)は無視するか活用すべき条件と捉え、解決できる原因(内因)だけを扱うことが大切と言えます。
したがって、単に悩みの解消と言った時に、ドロドロして思っ苦しい得体のしれない何かではなく、そこに理想と現実のギャップを発見(問題の発見)し、解決すべき問題として取り出し(問題の対象化)、時代や環境、景気や他人、制度や法律など自分では解決できない外因を排除して解決できる内因にだけフォーカス(問題の階層化)するという3つのプロセスで問題を明確にすることで、はじめて解決への準備が整うことになります。
悩み解消の3ステップ
問題解決に移る前に、悩みの解消についてもう少し補足しておきましょう。というのも、悩みの正体を知れば、わざわざ問題解決せずとも解消できる場合があるからです。つまり、悩みの問題化の時点で問題としなくてもよい、問題にならない場合もあるということです。
悩みという漢字の語源を調べてみると、「心+頭」で「心頭」という意味だと分かります。「心頭滅却すれば火もまた涼し」というのは、心の持ち方ひとつでいかなる苦痛も苦痛とは感じられなくなることを言いますが、つまり、悩みとは自分勝手に生み出したり作り出している思い込みや幻想にすぎない場合も多いので、思い込みや幻想だと気づけたのならそれはそれでOKということになります。
たとえば、悩みの解消方法にはどんなものがあるでしょうか。
ある人は徹底的に向き合うと言い、ある人はなかったことにする、無視すると言い、またある人は気のせいだと思うことにすると言います。
悩みに徹底的に向き合った結果、蓋を明けてみればとるに足らない、悩む必要のないことだった、なかったことにすればそれで済む、ということも多いのです。
こういう時には、悩みはあえて問題化する必要がありません。別になんでもかんでも問題化すれば良いというものではないので、問題にならないならその時点で悩みが解消してよかったということになります。
したがって、悩み解消の3ステップは
- 思い込みでないか確かめる
- 悩みを問題化する
- 問題を解決する
という流れになることが分かります。
1.思い込みでないか確かめる
まず、多くの悩みとは、いい人でなければならない、いい子でなければならない、というように、自分はこうあらねばならない、という囚われからきていることがほとんどです。
このような囚われが強烈にある人は、あるがまま、ありのままの自分でいいんだとか、自分らしさというのに気づくことによって、囚われから解放されて悩みが一気に解消されることがあります。
一方で、「あなたには悩みが全くなさそうですね」と言われる、自由奔放、勝手気儘、独立独歩で我が道を行くというようなタイプの人がいますが、そういう人は悩みがないわけではなくで、悩みなどないと思い込んでいるだけかもしれません。こういう人の場合は、その思い込み事態が問題の原因になっている場合があるので、解消の対象となります。
2.悩みを問題化する
上述したように、悩みとは、
- アクセルに対するブレーキ
- 欲求に対する障害
- 現状打破に対する現状維持
- 理想に対する現実
ということですから、身も蓋もない事を言ってしまえば、悩みのない人はいない、つまり問題のない人はいないわけですから、理想状態や実現したい夢や願望があるかぎり、問題は見つけることができます。
また、問題にはすでに(顕在)、これから(潜在)、みずから(ストレッチ)という3種類の問題があり、経営戦略や人生戦略上、より高みを目指したい場合に、目標と現状の間にみずから意図的にギャップをつくる(ストレッチ)場合もあります。
3.問題を解決する
ここからようやく問題解決の議論に入ることができます。後ろ向きでどうも解消する気になれない「悩み」から、前向きに解決したいと思える「問題」に変換することができたのです。
ところで、問題解決には悩み解消とは別のコツがあります。これを理解しない限り問題解決はできません。
問題解決できない3つの理由
悩みが悩みのままでは解決できないように、問題も問題のままでは解決できません。問題解決できない理由は、
- 何が問題が分からない(特定失敗)
- 問題が大き過ぎる (分解不足)
- 原因を外部に求める (他人依存)
ということが考えられます。
1.何が問題かわからない(特定失敗)
たとえば、「おもてなし」を向上しましょう、料理をもっと「おいしく」しましょうといった場合の問題とは何でしょうか。それは、「おもてなし」とはなにか、「おいしい」とはなにかがわからないということです。
「おもてなし」とはなにかがわからずして「おもてなし」できるでしょうか。「おいしい」とはなにかがわからずして「おいしい」料理をつくることができるでしょうか。
このように何が問題かわからないというのは、言葉の定義が不明確という場合が多いのです。
また別の例を挙げると、問題と課題の違いですとか、戦略と戦術の違い、目的と目標の違い、リーダーシップとマネジメントの違い、セールスとマーケティングとイノベーションの違い、など色々あります。使っている言葉の定義が不明確だと問題は解決できません。
ちなみに、このようにして考えると、
- 問題・・・テーマを問う
- 課題・・・テーマを課す
- 質問・・・問いの質
ということですから、解決すべきテーマとは何かを問うものが問題で、問題を解決するためにやるべき少項目のテーマを課すのが課題、よい解決策を導き出すために必要なのが質の良い問いだということがわかります。
つまり、あるべき姿がわからないと解決すべき問題がわからないということになり、逆に、あるべき姿が明らかになりさえすれば、やるべきことは自ずと明確になることがご理解いただけると思います。
2.問題が大きすぎる(分解不足)
売上不振が問題だから売上を上げるにはどうしたらいいか解決策を考える、ということは一見すると普通のことに思えますが、これは問題が大きすぎて解決できないパターンです。
売上と一口に言っても、売上には考えるべき5つの要素があります。
- 売上=客数×客単価
- 客数=既存顧客数+新規顧客数−流出顧客数
- 客単価=利用頻度×注文点数×商品単価
です。
客数増加による売上増加を目指す場合、既存顧客は変動しないと考えると、考慮しなくて良いとして、新規顧客の増加流出顧客の減少となり、売上を上げる時に考えるべき5つのポイントは、
- 新規顧客の増加
- 流出顧客の減少
- 利用頻度の増加
- 注文点数の増大
- 商品単価の向上
であることがおわかりいただけるとおもいます。
単に売上を上げると言っても、どこに注目してどこを重点的に向上させるかで問題解決の質が劇的に変わります。
3.原因を外部に求める(他人依存)
競合に客を奪われた、誰かと喧嘩した、天気が悪くて不作が続いた、ウィルスの蔓延により風評や死者が増えた。食材が高騰した、少子高齢化になって市場が縮小した、などなど、一般的によくありがちばフレーズですが、これらはすべて外因であり解決できない問題です。
問題解決の3段階9項目
問題解決は次のたったの3ステップです。
- 問題の特定
- 原因の究明
- 解決策立案
問題は単なる現象にしか過ぎません。何がどうなっているという事実とか状態でしかないわけです。
したがって、事実や状態、現象としての問題はそのままでは解決できないことは先ほど述べたとおりですが、問題(現象)を引き起こしている真犯人(原因)を見つけ、それを解消する解決策を立案することで、解消することができます。
この3段階はさらに9つの少項目に分解することができます。
- 目的
- 最終目標
- 中間目標
- 現状
- 問題
- 原因
- 問題点
- 課題
- 解決策
2番の最終目標と3番の中間目標を1つの目標として全部で8段階とすることもできますが、問題が大きすぎて解決できないという問題を回避する目的で、あえて中間目標(自分で解決できる問題)を設定しています。
たとえば、目的が社会貢献することで、最終目標が社会を良くするということだとして、中間目標は、自分で解決できる問題、実現できることはこれだ、というマイルストーンを設定する、ということです。
問題解決におけるたった2つの質問
問題解決のための原因の追求と解決策の立案に必要な質問は以下の2つだけです。
- 井戸の質問
- トンネルの質問
1.井戸の質問
井戸の質問とは深堀の質問で、「その原因はなにか?」ということを「なぜ?なぜ?」と垂直追求していく時に使います。機械が故障したなど、原因が明確な問題の場合、井戸の質問だけで解決できる場合がほとんどです。
2.トンネルの質問
これに対してトンネルの質問とは、「その原因を解決しさえすればこの問題は全て解決するか?」と視野を強制的に広げ、議論を水平展開するときに使います。複雑な問題の場合、井戸の質問だけでは単なる犯人探しや粗探しになってしまい、原因が外的要因になってしまい問題解決にならないことがあります。そういう場合に、他の解決できる原因を探すのに役立ちます。
問題解決の姿勢
問題解決をする際の姿勢として留意しておくべき3つのポイントがあります。
- 当事者意識
- 禁止の禁止
- ゼロベース思考
という3つです。
1.当事者意識
他人事と思っている限り本当は解決できる問題でも解決することができません。問題は我が事化することで解決の対象となります。したがって、環境の問題や社会の問題を解決するという場合、問題が大きくて解決できないように思いますが、我が事化して考えてみると、解決できるサイズの問題が見えてくるようになります。
つまり当事者意識を持つこととは、大きな問題に対し、「自分にできることは何か」と我が事化して考えることに他なりません。
ここで少しだけ具体的な問題について考えてみましょう。国の医療費増加が問題となっています。この問題を解決するために、問題の我が事化をしてみました。
すると標準体型、あるいは理想体型から考えた時に、現状が肥満ということが問題としてわかってきました。肥満の原因が食べ過ぎ、飲み過ぎだとわかり、解決策として1回に食べたり飲んだりする量を減らして、全体的な摂取カロリーを制限しようと考えました。
これで自分が健康になり、国の医療費増加問題の歯止めに少しでも貢献できるでしょうか。
このように考えて食事制限する人はたくさんいますが、問題を解決できる人はごく一部で、実際にはほとんどの人はリバウンドしてしまいます。
なぜ人は禁酒や禁煙、ダイエットに失敗するのでしょうか。
2.禁止の禁止
実は、禁欲など禁◯◯というのは、問題解決ではなく問題の先送りに過ぎません。痩せるために間食を禁止したり、脂質や炭水化物を極端に減らしたり、ということがありますが、これらは皆、問題の先送りであって問題解決ではありません。
我慢は辛い、辛いものはやりたくない、やりたくないものは失敗します。抑圧は倍の反動となってかえってきます。これがリバウンドの正体です。
つまり、ダイエットに失敗するというのは、根本的な問題解決をしていないからです。問題解決のためには、禁止を禁止しなければなりません。
では、禁止しないで問題解決するにはどうすればよいでしょうか。
3.ゼロベース思考
我慢を我慢と思わない、禁止を禁止と思わないように認識の書き換えができたらどうでしょうか。そんなことはできないと思われるかもしれませんが、だれもが経験しているはずです。
たとえば、好きで好きで仕方ない恋人と別れることになった経験はだれにでもあると思います。一時激しく落ち込みますが、立ち直ってみると、あんなにも恋しくて仕方なかった恋人が、もう必要ない、不要という認識に変わっています。個人差は多少あれど、やがて時間が解決してくれるものです。
これと一緒で、食べたくて食べたくて我慢できなかった大好物を、自分には必要ない、不要、毒、食べたら死ぬ、などと一種のマインドコントロールのように認識を変えていくことで、思考回路を上書きすることができます。
これは、既成概念、固定観念、思い込みや囚われの正体に気づいて壊し書き換えるということで、問題解決の専門家であるコンサルタントなどが日常的に行っている「ゼロベース思考」と呼ばれる思考法の一つです。
囚われという字は、人が囲われている状態を表しています。その囲いとは、固定観念、既成概念、常識、思い込み、自己認識、トラウマなどなど、生まれてから学習によって形成されてきたものです。これに気づき、破壊して、書き換えることです。
まとめ
冒頭の繰り返しになりますが、知っていることと実際にできることは違います。
問題解決集中講義で、問題解決とはなんぞや?というのを知ることはできますが、だからといって問題解決をして目標達成した理想を実現できるわけではありません。
そのための数稽古はどうしても必要です。
達成会議を毎月定例会議として開催しているのはそういう理由からです。
今まで何も問題ないと思っていた人も、問題とは理想と現実のギャップだと知り、問題解決とは目標達成した状態、理想実現した状態だと知り、現状に満足していない自分に気づいてしまった人もいることでしょう。ではどうやってそれを解決するのか、具体的な解決策が思い浮かんだ人もいるかもしれません。
しかしながら、それが正しいかどうか、もっといい方法はないか、自分だけで検証するのはなかなか難しいことです。
「その原因さえ解決できれば問題はすべて解決するだろうか?」とトンネルの質問をして、自信をもってYES!と言えないという場合には、ぜひ達成会議に参加して、他の参加者の皆さんからのアドバイスを求めてみてください。
達成会議では問題を我が事化して解決策を立案するので、すぐに実行できて効果が出るアイデアを得ることができます。
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