金山剣術稽古会は17時からの2時間はマンツーマンレッスン、その後一人合流したがわたしは自主稽古、たまに参加で抜刀術のみ合同で。
順番があべこべになるが、〆の抜刀術から書き進める。
目に見えぬ敵
何と言っても空調設備のない真夏の武道場での稽古は
「暑さ」との戦いになる。
絞れるほどの汗というのはよく聞くがはその先は初めての体験だった。
袴の裾から、道衣の袖から、なんと汗が滴り落ちる。
夏用のジャージ道衣を着ていたが太刀打ちできない。自慢のクールドライ機能も吸水率100%超えではもはや溢れるしか手立てはない。
持参した2リットルの水と水筒およびスポーツドリンク、合計3リットルはあっという間に消費し、夜の部の稽古までにさらに4本2リットルを買い足した。合計5リットルだ。
100%汗を吸水した稽古着がまた重い。
稽古着を手洗いしたことのある人ならわかるが、脱水する前の重さといったらピンとくるだろうか。
暑さに加え重さとの戦いであった。
前回高級な正絹の角帯を汗まみれにさせてしまった教訓から今日は木綿の角帯で参戦。
これで心置きなく汗がかけると油断した。
汗まみれの木綿帯で帯刀すると、なんと鞘引き不能となる!
雨天の戦闘では抜き身で剣術主体に組み立てねばなるまい。
これも新しい発見であった。
鷲眼一閃を習う
鞘引きできないので鞘引きがほとんど必要のない抜刀術の稽古をしようと先生。
鷲眼一閃(しゅうがんいっせん)を稽古した。
なんだこのカッコイイ技名は!
技名を聞いただけでテンションが上がる。もちろん技自体もカッコいい。鷲が獲物を狙って飛び立たんと身構えているような。
右足前で左手は鯉口に親指をかけた状態で構え、敵が斬り込んできた瞬間右足の前に左足が来る程度に右斜め前に躱しつつ懐に潜り込み水平に抜きつける。
この時左足前で斬り終わっているのであるが、踏み込んでもいないし、飛んでもいない。
前方加重で股関節から足を引き上げることで自然と前進力が生まれる、その原理を利用している。
言葉にすればなんのことはないが実際には股関節からの引き上げは鍛錬なしには不可能だ。
稽古会ではこの股関節の引き上げを実現すべく、蟹(かに)や雀(すずめ)、蛙(かえる)に飛石(とびいし)という鍛錬稽古をする。
時間にすれば15分程度であるが、翌日下半身は悶絶ものの筋肉痛に襲われる。
思わず冒頭の鍛錬稽古も触れられたのでよしとするが、私はまだ未熟なのでこの股関節の引き上げが十分にできないためどうしても踏み込みや跳躍をしてしまう。
さらにはその跳躍につられて上半身も右に回転しまう。
下半身のみ半回転させ、上半身は敵に正対を維持しなければならない。そうしないと鷲が大きく翼を広げ鉤爪で獲物を捉えた鋭い体をなさない。
修練あるのみ。
羽ばたく鷲のように
さて、鞘引きをほとんど必要とせず抜刀できるということは、鯉口の位置はなるべくそのままに上半身の前進にともない引き抜いていることになる。つまり、上半身の前進とともに鯉口は前進してはならない。
しかしながらフィニッシュは左足前状態。
これは鞘引きが全く不要という意味ではなく、必要最小限という意味だ。少しの鞘引きで抜く、ということだろう。
ここで重要なのは十分な斬撃力を得るために、鞘送りもせず鞘引きの余地をあえて殺し、
「溜め」をつくることかもしれない。
鞘送りして十分な鞘引きの余地を作ってしまうと全くの手斬りになる。
抜き手に最大限の力を伝達するために左はなるべくその場に留めようとする。
前進しようとする右、留まろうとする左。この
拮抗と開放のバランス。
もしくは内側に向かう力と外側に向かう力のバランス。
右と左というよりは、内と外の方がしっくりくる。
そう、まるで羽ばたく鷲のようだ。
前段階においては内側にパワーを凝集させ、抜きつける瞬間に一気に外側に開放する。
ところで、やってみて気づいたが、この技の要諦は
鋒斬り(きっさきぎり)にあるのではないか。つまり、胴を真っ二つに両断する技ではなく、
鋒で肚を切り裂く技だ。スパっと切り抜くにはものうちで脇に斬り込んでは切り抜けない。肚の前部を切り裂くことで腹圧により内蔵がドバドバっと飛び出てくるはずだ。
実にエグい。実際に斬ってみた
昨日ちょうど斬法の出張指導があったので、指導の合間に実験的にやってみたのがこちら。(私の稽古会に参加している人で閲覧許可をした人のみ閲覧可能です。)
3回やってみたが最初のは深く入りすぎた。
2回目3回目と精度を高め、まだまだであるもののなるほどこういう感じかという感覚だけを得た。
ものうちで両断することだけが斬法稽古ではない。
刀の色々な部位で色々な斬法を検証しなくてはならない。
時に今回の動画のようにあえて斬らない、斬れては駄目な太刀もある。
普通に抜いてはものうちで一刀両断してしまう間合において、しかも間合いを詰めて左足前で抜き撃ちにより鋒斬りをする。
経験者であればこれがいかに難しいかわかるはずだ。
これを可能にするのが左足を前にする難易度高く非合理的に見える体捌きにあったとは。
こんなことは頭でああだこうだ考える前にやってみたらわかることだ。
やったらわかることはとても多い。
剣士なら真剣による斬稽古も行うべし
居合や剣術をやる人で切ったこともないのに切れる切れないを論じる人がいるがまったくナンセンスである。
そんなこと切ったこともないもの同士でああだこうだ議論する前にやってみたら良い。
それが切れるのか切れないのかは一目瞭然だ。
そもそも、居合や剣術というのは真剣を用いた武術であるはずだ。真剣以外のものは稽古のために、とくに安全のために開発されたツールにすぎない。
杖術と剣術稽古
抜刀術で紙面を割き過ぎたためすっかりおまけ感が漂ってしまうが、杖術と剣術に関してはさらっと記しておく。
真夏の杖は湿気による摩擦係数の上昇に起因する火傷に要注意だ。手の中でスルスル滑らせながら変幻自在に操る杖だけに、鋭く打ち込む時など一瞬で火傷する。
なぜ杖術の稽古をやることにしたか、ということについては
以前の記事で紹介した。居合と剣術に活きると直感的に感じ、実際にやってみて確信に変わったのである。
基本の打ち込みをやったあとは二十連円打のうち十五連までを習った。
5番と6番、8番を間違って覚えていたため集中的に修正した。
早くあのカッコいい十一之型と轟之型を習いたい。
剣術は基本の切り割と突き返しで仕太刀打太刀に分かれての打ち込み稽古を行った。やはり剣術は正中線や軸の意識が格段に上がる気がする。
一人稽古では敵の刀を受けるとか捌くとか巻き落としたりということは形の上ではあれども実際にはやることがないので、どのくらいの力でどんなタイミングでおこなえば良いのかなどまだまだイメージできないでいる。
鍛錬あるのみ。
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