経営コンサルティング会社を経営しているので、時々起業の相談があります。起業後事業をうまく軌道に乗せられる人もいればそうでない人もいます。
そこで、起業家として成功できるかどうかの分かれ目は何か、考えてみました。
金なしコネなし人脈なしで起業
私自身、現在会社の経営者であり、2012年に起業した起業家の一人ですが、実のところ金なしコネなしで起業してしまった私には誇れることなどありはしません。ただ家族をはじめ支援してくれる人に恵まれただけかもしれません。
国立大学を出て大学院に進み、修士の学位を得ていますので学歴だけはありましたが、その学位は工学修士であり、しかも、卒業してはじめに就職した職場は中卒者も多い外食産業で、厨房のシェフでした。
そこから一部上場のコンサルティングファームに転職し、5年の丁稚、そして経営コンサルタントとして独立起業しました。したがって、学歴は現在の経営コンサルティング業とは何の関わりもなく、一切生かされていません。
まったく無駄だったかというとそうではなく、それが今となっては私の独自性や強みとして発揮されていたりもするのですが、今回の記事とは関連が薄いので詳しいことはまたの機会に。
「覚悟」があるかどうか
話を本題に戻しまして、金なしコネなしの私でもなんとか創業以来経営継続し続けられているのは、なんと言っても妻(現・当社取締役)の助けが一番、その次に家族や親族の助け、そして顧問先をはじめとした取引先の皆々様のお陰なのです。
こうした助けが得られているのは幸運ではありますが、幸運で片付けては話は終わりです。
仕事柄たくさんの経営者と会って直接話をしてきている立場から、起業家として何かを成し遂げられるかどうかの分かれ目をお話しようと思います。
一言で言うと「覚悟」の違いです。
その「覚悟」がどこから生まれるのかというと、「退路を断つ」こと、「逃げ道を塞ぐ」こと、「背水の陣を敷く」こと、「切羽詰まった状況に身を置く」こと、「土壇場を意図的に作り出す」ことなのだと思います。
逆境をバネに、ストレスをパワーに
そもそも経営者というのはその責任という意味において、従業員とは比較にならないほど日々逆境に立たされ、プレッシャーやストレスに晒されているわけですが、むしろ逆境をバネにプレッシャーやストレスを「パワー」に転換するという特殊技能を備えている人が多いように思います。
エネルギッシュな経営者はポジティブでどことなく楽観的というか、何事も肯定的に捉え、清濁合わせ飲むようなおおらかさや器を備えています。
私の場合それがやや度を過ぎるようで、親や妻から「物事を簡単に考え過ぎだ」と諭されることが多々あります。何事も過ぎたるは及ばざるが如しです。
困難の逆転に活路あり
さて、起業家として成功できるかどうかの分かれ目はこうした「資質」にある気がしますが、これは生まれ持った資質というよりは後天的に備え得るものです。それを可能にするのが「覚悟」ですが、その「覚悟」は絶体絶命のピンチを作り出せるかどうかに掛かってきます。
誰も喜んで絶体絶命のピンチに身を置きたいとは思わないでしょうが、そうではなく、そうなった場合に逆転出来るかどうかなのだと思います。
私が真剣を用いた居合・剣術稽古を通じて武士道精神を伝えていることにも繋がりますが、武術とは「困難の逆転」に他ならないのです。
武術稽古では想定しうる最悪の状況に身を置きそこから抜け出すということを稽古を通じて実践しているわけです。
この絶体絶命のピンチを、先程から申し上げているように「退路を断つ」とか「背水の陣を敷く」とか「切羽詰まる」とか「土壇場」というわけですが、これらが刀剣由来の戦場で生まれた言葉だということも無関係ではありません。
火事場の馬鹿力を意図的に引き出す
こういう状況に置かれたときにだけ発動されるパワーがあります。
そう。「火事場の馬鹿力」です。
経営者というか起業家というのは、この「火事場の馬鹿力」を意識的に引き出すコツや勘所を押さえているように思います。
人間を成長させるのはいつだって過酷な逆境状態だと言われます。つまりストレスフルな環境ということです。
大抵の人はストレスと聞くと避けたいもの、逃げたくなるものだと思いますが、起業家はストレスを成長のチャンスと捉え喜んで選択するだけでなく、自ら進んでその状況を作り出せる人のことを言うのだと思います。
退路や逃げ道を用意しておく人は起業には向かない
さて、起業家としてのあるべき姿が見えたところで、これは駄目だろう、というのをサムライ社長的に一刀両断しますと、退路を用意しておく、逃げ道をつくっておく、ということにつきます。
これは、Aパターンが駄目だった場合のBパターンを用意しておくことととは本質的に異なります。
起業したい、もしくは起業した人の中には、うまく行かなきゃアルバイトでもして食い繋げばいいや、ダメだったら職探せばいいやくらいに思っている人を多く見受けます。
起業するということは事業を起こすということでもあります。
事業とは社会の何らかの問題を解決するものです。つまり、すべての事業は問題解決業であると言えるのですが、起業家とは言い換えれば問題解決屋のことです。
問題解決屋が目の前に立ちはだかった問題に対して解決できずに屈してしまうことは、そもそも問題解決屋ではなかった、つまり、起業家ではなかったということになってしまいます。
逃げ出したり屈することが許されない人たち
経営者はもとより起業家というのは、逃げ出したり屈したり投げ出したり、そういうことが許されない人たちのことであって、立ちはだかる壁は越えるしか選択肢がない人のことでしょう。
どん底でもやるしかない、切羽詰まった状況でそれを乗り越える方法を考え尽くして只管実行し続ける人たちのことでしょう。
当たり前のことですが、こうやって一つ一つ乗り越えた人たちと、乗り越えられなかった合理的な理由(やらない理由、できない理由)を考えている人では経験値に圧倒的な差が生まれます。
壁を乗り越えたという経験値こそが成長実感や達成感として自信に変わり好循環を生むのだと思います。
すべて自己責任
Stay hungry で有名なスティーブ・ジョブズの名講演がありますが、何と訳すのが適切でしょうか。私は「退路を断て」と訳したいです。もしくは「いつも崖っぷち」です。つまり、サムライ社長的に言えば、「常在戦場」だということです。
ハングリーであるためには、目標を高く持つことも一計です。高い目標は自身の小ささや至らなさを如実に突きつけてくるので、謙虚な気持ちにさせてくれる副次的効果も期待できます。
したがって、退路を用意しておくことは、壁を乗り越えられなかった弱い自分を肯定することとイコールであり、これが習慣化してしまうと矮小な自分を尊大に見せたり、あらゆることを他責し自己責任とは認めない無責任な人間が生み出されてしまうでしょう。
経営者のあり方として「すべて自己責任と捉えるべし」というのは常日頃から指導してきていることですが、やがて経営者になるであろう起業家も当然備えておくべき資質であると思うのです。
まとめ
以上、起業家として何かを成し遂げられるかどうかの境目は、
退路を断つこと、逃げ道を塞ぐこと、背水の陣を敷くこと、切羽詰まった状況や絶体絶命のピンチに身を置くこと、土壇場を作り出せること、自ら逆境を作り出しバネにすること、プレッシャーやストレスをパワーに転換すること、火事場の馬鹿力を意図的に出せること、すべて自己責任と捉えられること、こうしたことができるかどうかにあります。
この記事を読んでいるあなたがもし起業したいなと一度でも考えたことがあるのならば、こうしたことを一つ一つ検証してみてください。
自分はまったく問題ない!という人はやらない理由できない理由はどうでもいいので、今すぐ起業しましょう。
不安な方はわたしにご相談ください。簡単に可否判断もさせていただきます。
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